2014 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける自由貿易主義と均衡的国民経済主義との相克
Project/Area Number |
23530237
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松永 友有 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 関税改革運動 / 保護主義 / 自由貿易 / ジョゼフ・チェンバレン / 歴史学派経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語論文"Reappraising the Tariff Reform Contoroversy"を作成した。イギリスにおける著名なジャーナルである『ヒストリカル・ジャーナル』誌に投稿中である。 本論文においては、イギリスの有力政治家ジョゼフ・チェンバレンによって1903年に開始された関税改革運動の性質について、オリジナルな観点からの考察をおこなった。すなわち、関税改革運動は、従来の研究史において、保護主義運動、保守党の選挙戦略、および帝国主義運動という、主に三つの側面から考察されてきた。本論文は、バーミンガム大学所蔵のチェンバレン文書、チェンバレンの側近である歴史学派経済学者ヒュインズのシェフィールド大学所蔵個人文書、オックスフォード大学所蔵の保守党文書などの一次史料に基づきつつ、チェンバレン父子をはじめとする関税改革運動の中心集団が、運動における帝国的要素を徹頭徹尾、他の要素に優先させていたことを実証した。 より具体的には、ジョゼフ・チェンバレンは、イギリス帝国からのカナダ離反を阻止することを最大の目的として、関税改革運動の全計画を組み立てており、その結果、関税改革計画は、イギリス本国の産業利害をカナダ利害に従属させることさえ辞さないものとなったのである。 以上のように、本論文は、関税改革運動の帝国的要素を強調してきたアンドリュー・トムソンの研究によっても解明が及ばなかった、関税改革運動の実態を新たに照射する意義を有するものと言える。
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