2011 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における相互扶助の経済思想とその実践に関する研究
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23530240
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松野尾 裕 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30239058)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 相互扶助 / 黒澤酉蔵 / 賀川豊彦 |
Research Abstract |
本「近代日本における相互扶助の経済思想とその実践に関する研究」は、大正期から昭和期の日本において誕生・成長した協同組合運動と農村共同体運動に着目し、共に教育と実業を重視した二人の人物、黒澤酉蔵と賀川豊彦のそれぞれの諸事業に関する文献考察と実地調査を通して、近代日本における相互扶助の思想とその実践を掘り起こし、それらの可能性と限界を解明し、描き出すことである。 平成23年度は、まず黒澤酉蔵に関して、かれにおける田中正造及び新井奥邃からの思想受容を解明するために、これら3人の思想的交流に関する先行研究文献を継続的に蒐集した。次に黒澤酉蔵及びかれと共に事業を興した人々に関して公刊されている伝記的文書を、複写等も含め可能な限り入手した他、8月に、かれの創設にかかる酪農義塾(現・酪農学園大学、在北海道江別市)関係資料、製酪販売組合(現・雪印メグミルク、在札幌市)関係資料を調査した。これらにより、黒澤酉蔵に関しては、現在入手可能な諸文献・資料のうちのかなりの部分を研究資料として確保できた。 年度後半は、賀川豊彦に関して、黒澤酉蔵に関してと同様に、先行研究文献、伝記的文書、事業関係資料等を蒐集・調査した。 なお、本年度は3月に発生した東日本大地震により、年度後半に至っても、特に賀川豊彦研究に関係する諸機関が被災地救援等の活動を優先していたため、諸機関への訪問による調査は制約されざるを得なかった。この分については次年度に繰り越すこととし、本年度は蒐集できた諸文献・資料等の分析に集中することとした。 以上の現地調査を含むパイロット・サーベイにより、従来、個別に関心が向けられてきた黒澤酉蔵と賀川豊彦との思想面及び実践面での関係が把握できた。この新たに発見した関係性を手掛かりにして、今後の研究期間中に扱う対象の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
黒澤酉蔵に関する本格的な研究はこれまで行われていない。本研究の推進により黒澤酉蔵を日本経済思想史に正当に位置づけることが可能となる見通しが得られた。また黒澤に比べ研究が進んでいる賀川についても、黒澤との関係性を発見するなど、新知見が得られた。蒐集した諸資料の整理・分析方法について一定の方針が定まった。
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Strategy for Future Research Activity |
毎年度、前年度の研究の遂行状況を総括したうえで、年度計画の調整を図り研究を推進する。平成24年度は、前年度のパイロット・サーベイによって絞り込んだ研究対象に集中して、一層の文献調査を進めるとともに、現地調査に取り組む。それらの調査結果を踏まえて、諸資料の分析・考察を進める。平成25年度に本研究の中間報告として成果の一部を公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)引き続き継続的に文献資料・研究論文等の蒐集を進める。(2)平成23年度に予定していた現地調査の一部が東日本大地震の影響により実施できていないので、それらを含めて現地調査を実施する。(3)蒐集した諸資料の整理・分析方法について一定の方針が定まったので、それらの電子データ化に必要な物品を購入する。
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