2015 Fiscal Year Research-status Report
LSEの福祉経済思想の系譜-社会市場論と行政学との対比を手がかりに-
Project/Area Number |
23530241
|
Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
江里口 拓 西南学院大学, 経済学部, 教授 (60284478)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
|
Keywords | ニューリベラリズム / ホブハウス / 進化論 / 自由論 / グリーン / スペンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ロンドン政治経済大学(以下LSEと略)の「社会市場論」の再検討にあたり,LSE社会学初代教授のホブハウスの経済思想に本年度も着目した。昨年度は,ホブハウスの福祉政策論と外部性論との関連について論文執筆したが,彼のニューリベラリズムにおける官僚主義批判の論拠についての課題が残った。フリーデンらの先行研究によれば,進化論に基づく独自の自由論がカギであることが次第に判明し,本年度はこれに集中して研究を行った。ホブソンについても同時に文献収集しながら,ニューリベラリズムの自由論と進化論についての考察を深め,ミル,グリーン,スペンサー,ホブハウスの相互の位置関係に気付くことができた。研究論文については8割完成という形であり,2016年度の成果発表を予定している。なお,研究の過程でオクスフォード大学のベン・ジャクソン博士の研究に触れながら,この先の研究展望としては,R.H.トーニーの機能的社会把握においても,ホブハウスの経済思想が大きく影響を与えていることが判明した。 研究成果の公表については,小樽商科大学で開催されたヨーロッパ経済学史学会とのジョイント企画であるESHETJSHETにおいて,LSE創設者であるウェッブ夫妻の福祉国家思想と自由貿易論についての英語論文を英語発表し,イタリア,フランス,ブラジルなどの各国の経済思想史研究者との知的交流を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の初年度である2011年度に,現在の勤務校である西南学院大学に転勤し,研究環境が大幅に代わった事への対応を迫られたこと,および両親の介護(父2014年死亡,母介護入院中),長子出生(2012年)などのライフイベントが重なったため,当初の予定は1,2年ほど遅れた形になっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
幸いにも期間延長を承認いただき,予算もほぼ1年度分を繰り越すことができた。また,年度の終わりにはイギリス・オクスフォード大学での海外研究を予定しており,最終年度に十分にふさわしい環境が整えられた。研究推進方法としては,ホブハウスの自由論と進化論についての日本語論文の投稿,ウェッブ夫妻のLSE福祉国家論の英語論文の海外雑誌への投稿,ホブハウスの日本語論文2本をより発展的に展開させた英語論文の執筆,オクスフォード大学でのベン・ジャクソン博士を交えた研究会発表などを行うことで,最終的な研究の成果を確認したい。海外研究調査で使用する電子機材についても若干の補充を予定している。文献としては,ホブソン,R.H.トーニー,初期のW.H.ベヴァリッジなどについて,研究途上で明らかになった文献についても補充を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究課題の初年度における職場異動,両親介護・看取り,長子出生などのライフイベントにともなう研究遅延のため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホブソン,R.H.トーニー,初期W.H.ベヴァリッジについての一次資料,二次資料,ホブハウスの英語論文作成にあたっての英文校正,および海外研究調査にかかわる電子機器など。
|