2012 Fiscal Year Research-status Report
貨幣・中央銀行・国家の連関に関する理論的および学説史的研究
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23530244
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 教授 (90194224)
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Keywords | 中央銀行の独立 / 裁量的な貨幣政策 / 貨幣と国家 |
Research Abstract |
本年度は、海外研究のため、ケンブリッジ大学経済学部の客員研究員として研究を行なった。研究は主として2つのことを実施した。ひとつは「リカードウの中央銀行論ー貨幣制度と政府」の論文を完成させた。もうひとつは、ヘンリー・ソーントンの中央銀行の独立について考察した。また9月にはイギリス、キール大学で開催されたThe 44th Annual UK History of Economic Thought Conference で「リカードウの中央銀行論ー貨幣制度と政府」を報告した。 中央銀行の独立という問題は、経済学史上、ソーントンがはじめて取り上げた。ソーントンによれば、中央銀行の独立は中央銀行の政府からの独立であるばかりでなく、政府の中央銀行からの独立が「大原則」である。政府が中央銀行から独立するためには、政府が中央銀行以外から資金調達できることが必要であるとソーントンは述べ、「減債基金制度」の重要性を指摘した。この制度が機能しているもとでは、中央銀行は裁量的な貨幣政策によって貨幣価値を維持することができ、公衆は通貨を信認すると述べた。彼が1797年の兌換停止を擁護した理由は、こうした政府の中央銀行からの独立と中央銀行の裁量的な貨幣政策に対する公衆の信頼が銀行券の価値の維持をもたらすことを指摘したことにある。中央銀行の独立という問題によってソーントンが明らかにしたことは、銀行券の価値が兌換や金準備にもとづくのではなく、中央銀行が政府から独立し、その裁量的な貨幣政策によって維持されることにあったと見ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リカードウの論文は英文の共著書として2013年度中にRoutledge社から刊行される予定である。また国際学会の報告も行なった。本年度は、資料の収集および解読を主として行なったが、今後は論文の執筆および発表に重点を移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、ソーントンの論文を完成させ発表する。第2に、「中央銀行の独立」に関してソーントンとリカードウとの比較研究をする。リカードウはソーントンから「中央銀行の独立」に関して示唆を得たが、リカードウは中央銀行としてのイングランド銀行を批判し、イングランド銀行に代えて国立銀行の設立を提案した理由を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度もケンブリッジ大学図書館で資料の調査・収集および論文作成を行なう。とくに、地金論争期の文献の収集を行なう。
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