2014 Fiscal Year Research-status Report
貨幣・中央銀行・国家の連関に関する理論的および学説史的研究
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23530244
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 教授 (90194224)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 中央銀行の独立 / 中央銀行 / 貨幣制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「ヘンリー・ソーントンの中央銀行の独立について」の論文をヨーロッパ経済学史学会(ESHET)で報告した。この論文は研究課題である「貨幣・中央銀行・国家の連関」の基礎をなす論文である。今後、この論文の完成度をさらに高め、論文を発表するつもりである。 ソーントンのイングランド銀行の独立論は、1797年からの兌換停止下におけるイングランド銀行と政府とのあいだの問題である。当時、兌換停止はイングランド銀行の巨額の政府貸付が原因であるという見解が支配していた。同行が政府に従属し政府の一部局であるために、銀行券の過剰発行が生じ、物価騰貴がおき、金の対外流出と人心の動揺による金の国内流出が結びついておきたという見解が有力であった。ソーントンはこうした見解に反論し、イングランド銀行は政府から独立しているので、政府貸付が巨額であったとしても、それは同行の政府への従属を意味していないと述べた。ソーントンが挙げたイングランド銀行の独立の根拠は、1.イングランド銀行と政府とが対等な債権債務関係にあること、2.政府の長期借入制度があること、3.議会に銀行券の数を公開することであった。これを検証するために、彼はイングランド銀行のバランス・シートを分析し、さらにイングランド銀行の裁量的な貨幣政策について考察した。 今後、ソーントン以前の独立論と以後の独立論の研究を考察し、中央銀行と国家との関連をさらに考察していくこととする。またステュアートの貨幣と国家との関係についても検討するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソーントンの論文が完成まじかである。資料調査も順調に進んでおり、今後さらに論文の執筆を進める状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、ソーントンの論文を完成させる予定である。第2に、リカードウの中央銀行の独立について論文を執筆する予定である。第3に、ステュアートの貨幣と国家の論文についても着手する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度の海外調査旅費と英文校正費にあてるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の海外調査旅費と英文校正費に使用する予定である。
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