2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の家計の住宅ローンタイプの選択と住宅取得及び住宅ローン需要行動の実証分析
Project/Area Number |
23530257
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
森泉 陽子 神奈川大学, 経済学部, 教授 (20166383)
|
Keywords | 住宅ローン選択 / パネルプロビット / ミックスト・ロジット同時推定 / 所得リスク / 金利リスク / 危険回避度 / 資産選択 |
Research Abstract |
近年,住宅ローンの固定金利FRMと変動金利ARMの差が著しく縮小している下で,アメリカではFRMタイプの住宅ローンのシェアが大きいが,日本ではARMタイプのシェアが上昇している.デフォルトしやすい危険な借手がARMを選択するか否かに注目して家計の住宅ローン選択行動を分析した. 23年度に続き大きく分けて2つの推定を行った.即ち,(1)パネルデータを用いたFRM-ARMタイプ選択のパネルプロビット推定,(2)多くのローンタイプの選択行動を推定するためのミックストロジット推定および,各ローンタイプと住宅ローン需要関数の同時推定である. 24年度の研究では23年度の研究実績を踏まえ,(1)については失業リスクも考慮し,さらにその他の所得変動リスクの変数を導入し,所得変動リスクを幅広く把握することができた.その結果失業リスクが高い借手(危険な借手)はARMを選択することが明らかになった.この結果は国際学会で発表しDPにした.しかしながら,金利リスクについては,未だ満足のいく推定結果は得られていない. (2)については,J. Barrios(economic letters,2004)の方法を参考に推定プログラムを開発した.5択でミックストロジット推定を行ったが,良い結果は得られなかった.現在3択のミックストロジットで推定を行っている.ローン需要関数との同時推定は現在のところ,良い結果は得られていない.金利変数には未だ改善の余地がある.ローン需要関数についても,金利の変数については良い結果が得られていない.(2)は国交省のデータを用いて推定を行っているが,変数の数が足りない等いくつか問題点があるので, 他データを利用しての推定が可能であるかを検討している.(1),(2)のいずれの推定においても金利データがネックとなっているので,用いる金利変数について試行錯誤しているところである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.パネルプロビット推定に関しては,新たに24年度データを追加して,幾つかの所得リスク変数を推計した.失業リスクも推計し推定に導入した.推定は概ね成功した.特に,失業リスクに関して,良好な結果を得られたことは意義深い.しかしながら,金利変数については,理論と整合的な結果が得られていない.現在別の手法で金利変数の作成を試みている.2.ミックストロジット推定で,離散変数(選択肢)推定と連続変数の関数(ローン需要関数)の同時推定のプログラムを開発できたことは,大きな前進である.この分析の焦点は同時推定にあるが,現在のところミックストロジット(離散変数)の推定および,同時推定結果は必ずしも良好ではない.この推定でも,金利変数は理論と整合的ではないので,選択肢の数および,固定金利タイプ,変動金利タイプのローンの内容(固定期間等)と,それに付随して変化するローン金利変数および,その他金利変数の作成を試行錯誤で行い推定作業を進めている. 3.海外との共同研究については,連携研究者,P. Tiwari(University of Melbourne)が転籍して間もない時期であったため時間的余裕がなかった.そのため,25年度に開始する.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.パネルプロビット推定に関しては,国際学会での議論およびコメントを組み入れて再推定する.新しく作成する金利変数を入れて再推定を行う.その推定結果から,日本における家計の住宅ローンの選択において,どのようなリスクが重要な役割を果たしているかを分析する.海外査読付ジャーナルに投稿する計画を持っている. 2.ミックスト・ロジット同時推定において,国交省のデータでは利用できる変数データ,標本数が必ずしも十分ではないことが判明した.そこで,他の調査の利用を検討している.1.および2.に共通する金利変数の問題について,金利データベースの再構築作業を継続する. 3.海外共同研究については,日本と同様パネルデータ(HILDA)利用を計画している.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者(連携研究者)の移籍に伴って24年度はオーストラリアに出張することが出来なかった.したがって,24年度分の渡航費用は25年度に繰り延べされている. 25年度は渡豪して,パネルデータを用いた国際比較について打ち合わせを行う計画である.その際に日本における連携研究者も同行するので,その分の旅費への支出が増加するものと思われる.また,金利データ再作成に関して,アルバイトを使用することも計画している.
|
Research Products
(1 results)