2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530259
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
蛭川 雅之 摂南大学, 経済学部, 教授 (10597628)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | ノンパラメトリック計量経済学 / 時系列計量経済学 / カーネル平滑化 / 非対称カーネル関数 / 拡散過程推定 / 共和分 |
Research Abstract |
平成23年度は既に準備段階に入っている、もしくはある程度研究が進んでいる課題を中心に取り組んだ。具体的には(1)非対称カーネル関数を利用したノンパラメトリック回帰の短期金利に関する拡散過程推定への応用、(2)非対称カーネル密度推定量に関するバイアス特性の改善、(3)汎関数係数共和分モデルのトレンド項を含む場合への拡張の3点を重点的に研究した。 まず、(1)に関しては、一連のモンテカルロ実験から、非対称カーネル関数を利用したノンパラメトリック拡散過程推定量が、従来の原点対称カーネル関数を利用したものに比べて優れた小標本特性を持つことを発見した。この結果をまとめた論文を本年度中に2度招待講演で発表した(下記「13.研究発表‐学会発表」参照)。また、本論文は先ごろJournal of Empirical Finance(査読付き)に掲載されることも決まった。 次に、(2)に関しては、元々原点対称カーネル関数を利用した密度関数推定量に対して提案された複数のバイアス修正法が、非対称カーネル密度推定量に対しても同様に適用可能であることを証明した。特に、この推定量はバイアス修正にもかかわらず全区間で非負となり、かつ、収束速度が改善するという特性を持ち、様々な経済変数の密度推定に応用可能である。この結果をまとめた論文はある査読付き雑誌で審査中である。 最後に、(3)に関しては、ある定常変数により係数が変動する汎関数係数共和分モデルをトレンド項・単位根過程双方を含むものへと拡張し、汎関数係数のノンパラメトリック推定量に関する大標本・小標本特性の分析を行った。特に、汎関数係数の推定量は漸近的に混合正規分布に従い、さらに、極限分布は説明変数に内生性があるなしに関係なく同一となるということを証明した。この結果をまとめた論文を本年度中に学会で1度発表した(下記「13.研究発表‐学会発表」参照)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に研究を予定していた課題4点のうち、3点で上記「9.研究実績の概要」に記述した通りの結果を出すことができたため、「おおむね順調」と判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究は、平成23年度の課題を発展・拡張させたものとする。具体的には、(1)一般化積率法の小標本特性の改善、(2)非対称カーネル関数を利用したノンパラメトリック推定の発展、(3)汎関数係数共和分モデルの拡張を重点課題と位置づける。 まず、(1)に関しては、ノンパラメトリック事前白色化共分散行列推定量を用いて一般化積率法によりモデルを推定する際のバンド幅選択法を提案する。同時に、一般化経験尤度法でモデルを推定する際の積率条件に関する複数の平滑化を比較検討する。 次に、(2)に関しては、非対称カーネル関数のハザード推定への応用を検討する。具体的には、ハザード推定に特化した非対称カーネル関数の開発と、非対称カーネル関数を利用したハザード推定量に関するバイアス特性の改善を行う。さらに、短期金利の拡散過程に関するノンパラメトリック推定量の小標本特性を改善する目的でのブートストラップ法の応用も検討したい。 最後に、(3)に関しては、まず、トレンド項・単位根過程双方を含む汎関数係数共和分モデルに関するバンド幅選択法の証明を完成する。続いて、このモデルに基づく共和分検定法の導出、このモデルの国内外のマクロ時系列データへの応用(例:消費と所得の長期的関係、長期貨幣需要関数の推定)などを行う予定である。また、別方面への拡張として、例えば、汎関数係数共和分モデルの誤差項もしくは遷移変数が単位根過程に近い場合の漸近理論の導出、さらには、汎関数係数共和分モデルと頑健推定法(例:局所分位点回帰法)との組み合わせなども検討したい。 上記研究の成果は随時論文にまとめる。各論文を国内外での計量経済学・統計学に関する学会で発表し、他の研究者と知見を共有するとともに、彼らの意見等を論文に反映しその質を高める。こうした過程を経て、論文全数を主要な計量経済学・統計学の査読付き雑誌に掲載することを最終目標とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究遂行のため、次年度所要見込額1,480千円を以下の通り配分する予定である。配分に当たっては、本研究がコンピュータ・インテンシブな性格を持つ点、および、研究発表の機会を今後増やしていく必要がある点などを考慮した。(1)設備備品費‥50千円(内訳:計量経済学関係図書購入@10x5【摂南大学設置】)(2)消耗品費‥200千円(内訳:ソフトウェア(Stata/MP4 12)@150x1、パソコン関係消耗品@50x1)(3)旅費‥890千円(内訳:(1)国内230‥共同研究打ち合わせ(東京4日間・研究代表者)80、学会発表(東京4日間・研究代表者)150、(2)外国660‥共同研究打ち合わせ(デンマーク8日間・研究代表者)400、学会発表(ニュージーランド4日間・研究代表者)260)(4)謝金等‥240千円(内訳:研究補助(大学院生1名・モンテカルロ実験補助)20時間/週x15週)(5)その他‥100千円(内訳:論文投稿料@50x2)
|
Research Products
(5 results)