2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530269
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大石 亜希子 千葉大学, 法経学部, 教授 (20415821)
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ / アジア / ソーシャル・クオリティー / 女性労働 / 格差 / 子ども |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績は以下の通り。第1に、子どものいる世帯の中でも貧困リスクが高いことで知られる母子世帯に着目し、就労率が高いにも関わらず貧困である理由について、離別した父親の人的資本や所得を含むデータ(労働政策研究・研修機構が実施した調査の個票)を用いて①母親の労働時間と賃金②養育費受給率の低さ③児童扶養手当という3つの面から分析を行った。結果の一部を紹介すると、米国タイプの養育費ガイドラインを導入することにより、現在は60%弱に達する母子世帯の貧困率を最大で15ポイントほど引き下げることが可能なことが分かった。研究成果はラトガーズ大学社会政策大学院のSocial Welfare Lecture Series において報告し、米国の社会政策研究の専門家と親の人的資本の違いが世帯間所得格差に及ぼす影響や米国タイプの養育費施策を日本に適用する可能性について議論した。また、成果論文はディスカッション・ペーパーとして刊行したほか、労働政策研究・研修機構の報告書(近刊)に収録されるほか、この問題と家族政策全体についての概説を「日本経済新聞朝刊・経済教室」「週刊社会保障」に寄稿し啓発と普及に努めた。 第2に、日韓台香港における女性の就労とワーク・ライフ・バランスについて、Asian Consortium for Social Quality で作成された国際比較データに基づく分析を行い、社会政策学会の研究大会にて報告した。 第3に、10月よりNational Bureau of Economic Research(全米経済研究所)ニューヨーク支所に滞在し、Wen-Jui Han氏(ニューヨーク大学)、Chien-chung Huang氏(ラトガーズ大学)とライフサイクルにおける女性の就労パターン変化と子どものウェルビーイングについて意見交換を行い、共同研究の手法について調整を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親の人的資本格差が子育て世帯間の格差に及ぼす影響については労働政策研究・研修機構の調査データ個票をもとに母子世帯と二親世帯の差に焦点をあてて研究を進め、論文としてとりまとめたほか研究報告も行っている。海外ジャーナルへの投稿準備も進めているところである。 ACSQデータを用いた女性就労とワーク・ライフ・バランスの国際比較研究は順調に進展しており、香港・台湾・韓国の研究者と共同論文を作成して社会政策学会の研究大会で報告した。2013年は国際会議で報告するほか海外ジャーナルへの投稿準備を進めている。 24年度に予定していたHan氏とHuang氏の招聘は、先方のスケジュール調整が困難だったため、両名を招聘する代わりに研究代表者である大石がニューヨークに滞在して意見交換と共同研究への調整を行った。滞在中は両氏のほか多数の研究者との意見交換が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、引き続き世帯形成プロセスと世帯間所得格差の関係および母親の就労パターンが子育て世帯間格差に及ぼす影響についてHan氏、Huang 氏その他の研究者との連携を深めながら研究を進める。最終年度であることに鑑み、Han氏もしくはHuang氏を招聘して研究成果のとりまとめとブラッシュアップ、普及を兼ねた国際ワークショップを開催する。 また、新規に利用可能となった公的統計について個票利用申請を行い、子どもの成長段階のどこで子育て世帯間の格差が生じているかについて分析を進める。 女性の就労とワーク・ライフ・バランスについてはアジア各国研究者との共同研究を進めており5月の国際会議で報告するほか、海外ジャーナルへの投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたHan氏Huang氏の招へいが24年度にできなかったため、25年度の招へい費用の一部として充当する。
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