2011 Fiscal Year Research-status Report
企業間信用の役割およびその銀行借入・在庫との関連性のミクロデータを用いた研究
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23530271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三輪 芳朗 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90109158)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 企業間信用 / 銀行借入 / 在庫 / 金融危機 / 貸し渋り / 不良債権処理 / 法人企業統計 / バブル |
Research Abstract |
平成23年度は、「法人企業統計」(年報と季報)の個表を活用して、企業間信用の実態を、それと銀行借入・在庫との関連性について、1980年代後半期から1990年代にかけての日本経済について検討することを中心とした。成果は、詳細な検討結果を示す膨大な報告書をdiscussion paperとして刊行し、それに基づく2本の論文を現在刊行中である。 1980年代後半から1990年代の日本経済については、「バブル」の発生・崩壊とその後始末に忙殺された混乱期だと広く理解されている。その中心に位置した銀行を中心とした金融機関の行動およびその後始末である「不良債権」処理にかかわる不手際が「失われた20年」の根本原因だとの理解が標準的である。かりに銀行などが「不良債権」処理に忙殺され、結果として「貸し渋り」が深刻であったとしても、企業間信用を中心とする代替的資金調達のための資金市場がきわめて有効に機能し続けたとする本研究の結論は、金融資本市場にかかわる新たな知見を示すと同時に、従来の通説・通念に根本的な疑問を提示するものである。また、頻発する「金融危機」に過度に注目しがちな世界中の人たちに対しても、重要な知見として歓迎されるはずである。事実、論文の一部を英訳したものについて、有力なアメリカ人研究者から説得的かつ驚くべき内容だとの反応を得ている。 企業間信用の研究にとっては現行の「法人企業統計」に重大な限界があることから、担当部署(財務省)にその内容を明示して対応を申し入れ、同時に有効な代替策の模索に取り掛かっている。 現在は、次の段階の研究の準備に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種統計資料を積極的に利活用する新しくかつ野心的な研究プロジェクトである。このため、おおよその見当をつけてはいるものの検討を進めてみなければ明確にはならない障害・欠陥に直面する多面的なリスクに直面している。企業間信用にはさほどの重点を置いていない「法人企業統計」は、おおむね期待した情報を提供してくれたが、一部には重要な限界を示すことがあった。このため「おおむね順調」とした。今後の検討についても同様の傾向があるものと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、今後は、より具体的な局面に焦点を合わせて、企業間信用と銀行借入・在庫の関連について検討を進める。具体的には、2008年夏以降のLehman shock以降の時期や、震災後のsupply chain shock、1997年冬以降の金融危機の時期、さらに「バブル」崩壊後の時期である。 利用統計としては、「法人企業統計」に加えて生産動態統計や鉱工業生産指数などの経済産業省所管の統計の活用を予定し、実際の準備作業に入っている。企業間信用と在庫の関係となれば製造業に焦点合わせるのが自然との判断による。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年4月より大阪学院大学勤務となり、研究上の打ち合わせおよび関連作業を進める上で東京との往復および東京滞在の必要性が大きく登場した。「次年度使用額」も含め、この目的にも積極活用する予定である。
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