2012 Fiscal Year Research-status Report
企業間信用の役割およびその銀行借入・在庫との関連性のミクロデータを用いた研究
Project/Area Number |
23530271
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Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
三輪 芳朗 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (90109158)
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Keywords | 企業間信用 / 銀行借入 / 在庫投資 / 金融危機 / 貸し渋り / 景気変動 / 四半期SNA / 法人企業統計 |
Research Abstract |
平成24年度は、第1に、前年度の作業結果を踏まえて、論文を作成し、セミナー等で報告して改良し、日本語・英語の双方で公表した。 第2に、研究対象である在庫および在庫投資に関しては、政府統計に限定してもかなりの数の推計値が存在し、それぞれが定義・調査対象・カバレッジ・調査頻度などの点で異なり、相互関係が必ずしも明らかではなく、相互に矛盾・対立する印象を与えるケースも稀ではない。最終的な目的である銀行借入と在庫投資の関連性の研究のためには、在庫投資データの作成方法にまでさかのぼって、利用可能データの性質と利用可能性について評価し、目的に照らして適切な統計を選択する必要がある。平成24年度には、この目的に向けた作業を開始した。事前の準備に基づき、可能性のある関係省庁(具体的には、経済産業省、内閣府、日本銀行)の関係部署と接触・意見交換をしたうえで、方法を選択して、現時点までに第1段階の作業を終えて、これを完成させるとともに、次の段階に進む準備を整えた。 カバレッジの点で内閣府のSNA統計の活用が望ましいが、とりわけ四半期SNAの在庫統計の推計値は、いずれの国でも激しく変動することが知られている。これこそがGDP全体の短期的な変動を引き起こす最大の要因だとして半世紀以上前から世界中のマクロ経済学者の注目を集めてきた。反面、在庫投資主体の企業行動に注目するミクロ経済学者の側からは、繰り返し違和感が表明されてきた。この基本イメージの対立に注目して、その実態の確認、原因の解明に取り組んだ。幸い、四半期SNAの在庫投資統計の推計過程で作成される計数がこの目的に有用であることに気づき、その活用が認められたことから、ショッキングかつ有用な結論を導くことができた。現在、各方面で結果を報告しつつ、論文にまとめつつある段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種統計資料を積極的に利活用する新しくかつ野心的な研究プロジェクトである。このため、おおよその見当をつけてはいるものの検討を進めてみなければ明確にはならない障害・欠陥が表面化する多面的なリスクに直面している。本年度に関しては、研究対象の一環である在庫投資統計そのものの実態と信頼度・利用可能性の確認などという課題に改めて直面する必要があった。幸い、誰も注目せず、誰も利用してこなかった一連の推計値の存在に気づき、その利用を許可されたことから、多くの専門家が驚き注目する結果を得ることができた。この結果自体は、今後論文にして公表すれば国際的に幅広い注目を集めるものと予想される。とはいえ、本研究の目的との関係では、必要ではあるが、いささか遠回りとなる作業である。この意味で、「おおむね順調に進展」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果である四半期SNA統計の在庫投資推計値(品目別・在庫形態別)を活用した検討結果を、論文にして公表することが前半の課題となる。並行して、在庫投資データに顕著な規則的季節変動が、会計慣行と密接にかかわっている点に注目して、その実態を法人企業統計季報の個表を活用して解明する計画である。今年度中にそこまで到達できるかどうかは不透明であるが、その成果と銀行借入・企業間信用との関連の検討も計画している。 なお、研究をより深めるために大阪大学大学院経済学研究科太田亘および神戸大学大学院経営学研究科畠田敬を連携研究者として追加する.太田は、法人企業統計調査のパネルデータ構築を試みたことがあり、また「負債比率における規模効果について」 (2000, 現代ファイナンス)では通商産業省企業活動基本調査を用いた分析を行っているが、本研究ではデータ準備および分析を担当する。畠田は『資本調達・ペイアウト政策』(2009年、中央経済社)の執筆者の一人であるが、本研究では分析を担当する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年4月より大阪学院大学勤務となり、研究上の打ち合わせ及び関連作業を進める上で東京との往復及び東京滞在の必要性が重大なものとなった。平成24年度と同様、平成25年度についても、「次年度使用額」も含め、この目的にも積極活用する予定である。
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