2011 Fiscal Year Research-status Report
海上輸送産業および港湾インフラの市場競争と東アジアの国際物流の評価に関する研究
Project/Area Number |
23530274
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
手塚 広一郎 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (90323914)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海上輸送産業 / 港湾間競争 / 国際情報交流(韓国,台湾) / 定期船市場と競争政策 / 不定期船市場 / 企業間協調 / スポット運賃とFFA / 国際物流 |
Research Abstract |
本研究の目的は,海上輸送産業や港湾インフラおける市場競争が,東アジアの国際物流に対してどのような影響を与えるかについての評価を試みることである.このような目的のもとで,本年度においては次のことを行った. 第一に,わが国の定期船市場をとりまく市場環境の変化が市場成果に対していかなる影響を与えたかを,株式投資リスクの面から分析した.そのなかでも,CAPM(資本資産評価モデル)のβの動きをもとにして,競争政策が促進され市場における競争が活発化した状態と定期船の運営を行う企業間の協調や合併などが進展した状態との間での市場環境の比較を行い,論文としてとりまとめた.この成果は平成24年度にMaritime Policy and Management誌に掲載される予定である. 第二に,不定期船市場における価格形成について,FFA(Freight Forward Agreement)のような先渡し市場とスポット運賃との関係についてモデル化を行い,FFAのデータを用いて,そのモデルの有用性についての評価を試み,論文として取りまとめた.この成果は平成24年度にTransportation Research Part E: Logistics and Transportation Reviewに掲載される予定である. 第三に,東アジアにおける港湾間競争について,非協力ゲームの枠組みを用いてモデル化を行い,釜山港と神戸港の比較を行った.あわせて,こうした港湾間競争とロジスティクスやサプライチェーンの概念との関係の整理について文献の詳細な調査を行った.この成果については平成24年度中に論文としてジャーナルに投稿する.なお調査あたっては,韓国・Inha大学校教授のYT-Chang氏や台湾・開南大学教授のPaul T-W Lee氏らと意見交換を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において想定していた研究作業は, 1)データ収集・東アジアの国際物流に関わる制度面の把握・先行研究のサーベイ,2)モデル・ビルディング,および3)定量的・定性的な分析の実施の3点である. 第一に,データ収集については,不定期船市場の運賃のデータ,定期船を運航する企業のデータ,および港湾間競争に関わる東アジアの港湾のデータなどを入手した.制度面の把握については,関連する書籍やHPなどによって情報を入手し,これを整理した.先行研究のサーベイは,特に港湾間競争の論文を重点的に行った.その成果は,論文の一部として公開する予定である. 第二に,モデル・ビルディングについては,上智大学・経済学部・石井昌宏氏や福岡大学商学部石坂元一氏らとともに,これまでに同氏らと作成したモデル(定期船市場,不定期船市場,および港湾間競争)を展開させた. 第三に,定量・定性的な分析に関しては,次の通りである.(1)定期船市場の市場競争の分析,および(2)不定期船市場の価格形成に関する分析に関しては,それぞれ論文として取りまとめた.特に,(2)については,Tezuka,Ishizaka and Ishii(2006)などで作成したモデルを適用し,BDIおよびFFA(Freight Forward Agreement)のデータを用いて,2000年以降の市場における投資行動について定量的な分析を行った.(2) 港湾間競争に関しては,Ishii,Lee,Tezuka and Chang(2010)の分析を展開させて,神戸港と釜山港の港湾の競争力の比較を行い,この内容を論文として取りまとめ対応するジャーナルに投稿した.あわせて,同論文の内容を2011年6月に京都大学・経済学研究科において開催された都市経済学ワークショップにて報告した. 以上から,本年度については,当初の予定通り進展しており.概ね順調に推移している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については,平成23年度に得た成果をもとにして,次の点を重視して行う予定である. 第一に,データ収集・先行研究のサーベイおよびモデル・ビルディングについては,平成23年度の内容を継続して行うこととする.あわせて,これらの成果を関連する学会,具体的には,WCTR(World conference on Transportation Research), IAME(International Association of Maritime Economists) および日本海運経済学会などで報告し,関連する研究者との意見交換を行う. 第二に,とくに,平成24年度は,海上輸送産業の市場成果と港湾間競争を関連付けること,それによって東アジアにおける物流・ロジスティクス市場の評価の試みることにより多くのウェイトを置くこととする.具体的には,韓国,中国,香港,台湾などの東アジア諸国に範囲を拡大してデータを収集し,これらの比較や実証分析を行う,加えて,物流・ロジスティクス市場およびサプライチェーンの構築に関する関係をより明確に把握するために,定性的な面から事例研究も並行して行い,この研究を,モデル・ビルディングや実証分析に反映させるように試みる. 第二に,本年度についても,内容がそれぞれまとまった段階で関連する学会誌(Transportation Research誌,Maritime Policy and Management誌,The Asian Journal of Shipping and Logistics誌などに)へ逐次投稿を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,以下のように使用することを想定している.設備備品費 100,000円,消耗品費 120,000円,旅費670,000円,謝金等 180,000円,その他 30,000円,合計1,100,000円このうち「設備備品費」については,海上輸送費にかかる書籍などの購入にあてる.「消耗品費」については,海上輸送にかかるデータおよびソフトウェアの購入にあてる.「旅費」については,「海外旅費」と「国内旅費」の2つがある,「海外旅費」では2回国際学会に参加し,研究報告と資料収集を行う.ひとつは,オーストラリア・パースで開催されるIAEEであり,もうひとつは台湾・台北で開催されるIAMEである.学会参加に加えて,東アジアの港湾について主要な港湾についてのヒアリングと資料収集を行うことを想定している.「国内旅費」については,福岡大学・商学部の石坂元一氏との研究打ち合わせなどによる旅費を想定している.「謝金等」については,論文投稿にかかる英文構成やデータ入力補助に用いる.「その他」については,研究にかかわる印刷代等に用いる.
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Research Products
(8 results)