2011 Fiscal Year Research-status Report
特許レースと経済成長におけるR&D企業の異質性の役割と影響に関する理論分析
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23530277
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
春山 鉄源 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70379501)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 特許レース / 異質企業 / 内生的技術進歩 / 政策効果 / 国際研究者交流 / 韓国 |
Research Abstract |
本研究では以下の三つを主な目的とする。(1)R&D生産性が異なる異質企業が競う新しい特許レースモデルと内生的技術進歩モデルを構築する。(2)特許権強化等の政策が企業のR&D生産性分布、技術進歩率、厚生などにどのような影響があるのかを研究する。(3)基本モデルに累積的イノベーション等を導入し拡張することにより、(2)に関する新しい知識を創出する。平成23年度では実証研究に精通することを基本とするとともに、目的(1)にある部分均衡モデルの構築に専念した。モデルの重要なメカニズムとしては、最近の国際貿易の分野で広く使われるMelitz (2003)の手法を参考にし、埋没費用とR&D生産性の不確実性を導入することによりR&D企業の生産性を内生化した。基本となるモデルには3ステージがある。第1ステージでは、Nの企業が特許レースに参入し、R&D生産性がランダムに与えられるが、埋没費用を支払った企業だけが第2ステージに進む。この時、生産性が低い企業は退出し、生産性が比較的高い企業が第2ステージに残る。次のステージでは企業はフロー支出を決定し、第3ステージでは一つの企業がR&Dに成功する。このモデルを使い以下の結果を得た。(i) Nが小さい場合、特許の強化はより生産性が低い企業の参入(埋没費用を支払う)をもたらすが、Nが大きい場合はより生産性が低い企業は退出する。(ii)R&Dの補助金も特許の強化と類似する効果がある。このモデルではNを外生変数と仮定しているが、内生化したバージョンも構築した。この拡張モデルによると、(iii)特許の強化はより生産性が低い企業の参入(埋没費用を支払う)を促すが、(iv)R&Dの補助金はR&Dフロー費用の形状により、より低い企業は参入、もしくは退出することが分かった。更に、一般均衡モデルである内生的技術進歩モデルの構築にも着手し、暫定的な結果ではあるが、類似する結果を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画は、関連する実証研究に精通することと特許レースの部分均衡モデルの構築であり、それに基づく政策効果の分析である。更に、一般均衡モデルである内生的技術進歩モデルの構築も開始しており、当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、前年度の研究成果に基づき更なる研究を進める。具体的には、基本モデルとなる特許レースの部分均衡モデルの二つのバージョンを構築し、その政策効果が明らかになった。まず第一に、この基本モデルの厚生分析を行う。第二に、一般均衡モデルである内生的技術進歩モデルへ拡張し、政策効果を分析する。第三に、部分均衡モデルに2種類のR&Dなどを導入する拡張モデルを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的には申請時の計画に沿って支出する。特に、今年度後期よりサバティカルをとることになるので、その期間に英国等へ海外出張する予定である。また、国内の学会での参加・報告を予定しているので、国内出張費も必要になる。その他、国内研究者による研究会費と書籍・物品購入が必要になる。
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Research Products
(3 results)