2012 Fiscal Year Research-status Report
特許レースと経済成長におけるR&D企業の異質性の役割と影響に関する理論分析
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23530277
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
春山 鉄源 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70379501)
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Keywords | 特許レース / 異質企業 / 内生的技術進歩 / 政策効果 / 生産性分布 / 内生的技術進歩 |
Research Abstract |
目的①R&D生産性が異なる異質企業が競う新しい特許レースモデルと内生的技術進歩モデルを構築する。 目的②特許権強化等の政策が企業のR&D生産性分布、技術進歩率、厚生などにどのような影響があるのかを研究する。 平成24年度では目的②を中心に研究を進め、目的①の内生的技術進歩モデルにも焦点を移した。まず、目的②について説明する。産業政策の効果については昨年度にある程度の結果を得たが、その結果をより厳密に精査することにより以下の結果を示すことができる。企業数Nが一定である短期的均衡では埋没固定費用への補助率の増加は生産性が低い企業の参入を促す。一方、企業数Nが自由参入により決定される長期的均衡では生産性が低い企業は退出することになる。即ち、特許レースに残る企業の中で最も低い生産性の閾値を縦軸に置き、横軸に時間を置くと、政策の変更後、生産性の閾値は時間とともにチックマーク型の軌跡を確認することができる。更に、ある条件の下(企業数Nが多い場合や、知識のスピルオーバが大きい場合など)では特許権の強化も同じ結果をもたらすことが示された。 次に、厚生分析について説明する。市場で決定される企業の分布と社会的に最適な企業分布とを比較する。ここで問題になるのは、社会的に最適な企業分布を達成するためにはどのような政策が必要なのかという点である。示された結果によると、生産性が異なる企業には異なる補助率が必要になる。例えば、生産性が異なる企業が3つ以上存在する場合、大企業と中小企業の2つに分けたR&Dの補助率では社会的に最適な企業分布は達成できないことを意味している。更に、社会的に最適な企業分布の達成には、生産性が低い企業よりもより高い企業を優遇する政策が必要であることも示した。また、一般均衡モデルである内生的技術進歩モデルでも、暫定的な結果ではあるが、類似する結果を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのバージョンの基本モデルを構築することが平成24年度の計画の一つであったが、これは企業数Nが一定である短期的均衡モデルと、自由参入条件で決定される長期的均衡としてモデルングを行った。また、政策の比較静学の精査や厚生分析を行った。一般均衡モデルでも類似の分析を行った。これらは当初の研究計画に沿ったものである。一方、部分均衡モデルに2種類のR&Dを導入したモデルについても、基本モデルに着手し、暫定的な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、現在までの研究成果に基づき更なる研究を進める。第一に、一般均衡モデルでの分析をより本格的に展開する。第二に、部分均衡モデルに2種類のR&Dを導入したモデルを考察し、可能であれば、ライセンシングなどへの応用を考察する。一方、細かな課題を設定しすぎると、それぞれのトピックについて深く分析できなく恐れがあるため、時間配分については十分に留意し研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的には申請時の計画に沿って支出する。特に、国内外の学会に積極的に参加する予定であるため、出張費が必要になる。その他、国内研究者による研究会費や書籍・物品購入が必要になる。
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Research Products
(6 results)