2013 Fiscal Year Research-status Report
特許レースと経済成長におけるR&D企業の異質性の役割と影響に関する理論分析
Project/Area Number |
23530277
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
春山 鉄源 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70379501)
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Keywords | 特許レース / 異質企業 / 内生的技術進歩 / 政策効果 / 生産性分布 |
Research Abstract |
平成25年度では次の2つの目的を中心に研究を行った。 (1)R&D生産性が異なる異質企業が競う特許レースに基づく内生的技術進歩モデルの構築、 (2)上述のモデルに基づく企業の分布と技術進歩率に対する様々な政策の分析。 まず目的(1)について説明する。既存の内生的技術進歩率モデルを拡張する事により、異質企業のR&D行動と企業分布を内生化した。このモデルの特徴は主に2つある。第一に、企業がR&Dでの雇用を決定するだけではなく、労働者の賃金が労働市場で決定される一般均衡モデルであること。第二に、特許レースがワンショットで終わる部分均衡モデルと違い、複数の産業で逐次的・累積的にイノベーションが発生する事により、長期的技術進歩率が決定される事である。目的(2)は、上述のモデルを使い以下の4つの政策の効果を分析した。(i) R&D の可変費用に対する補助、(ii) R&D の固定費用に対する補助、(iii) R&Dへの企業参入を促す政策、(iv) 人的資本を増強する政策。まず簡単にまとめると、部分均衡モデルの結果と質的に同様な場合もあったが、興味深い異なる結果も得る事ができた。例えば、R&Dの可変費用と固定費用に対する補助率の増加を考えよう。前者の場合、技術進歩は促進されると伴に比較的に生産性が低い企業の R&D からの退出を促す。後者の場合、結果は質的にも量的にも正反対になる。即ち、R&Dの可変費用補助の増強により、精鋭企業が技術進歩を促進することになるが、固定費用補助は「弱者」を助け、結果的には技術進歩を妨げることになる。この結果は、部分均衡モデルと対称的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの目的は以下の3つの点である。 (1) R&D生産性が異なる異質企業が競う新しい特許レース・モデル(部分均衡)と内生的技術進歩モデル(一般均衡)を構築する。 (2) 特許権強化やR&D補助などの政策が企業のR&D生産性分布や技術進歩率に与える影響を分析する。 (3) 基本モデルを拡張し、累積的イノベーション、ライセンシング、ジョイント・ベンチャーなどを導入する。 目的(1)、(2)、(3)の累積的イノベーションは達成されたが、目的(3)の他の項目は平成26年度に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、平成26年度の目的は基本モデルの拡張である。方針としては、ライセンシングとジョイント・ベンチャーを導入し、基本モデルを検討し直す。また具体的な案はまだ決まってはないが、ライセンシングに関しては、2段階(ステージ)の特許レースを考える事ができる。例えば、第2ステージのイノベーションの商品化は、第1ステージの特許が必要とする設定である。ジョイント・ベンチャーに関しては、複数の企業がジョイント・ベンチャーを組むとした上で特許レースに参入し、固定費用を負担する事によりR&D生産性が明らかになるという設定方法を模索する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
洋書をアマゾンをとおして平成25年11月末に注文したが、平成26年3月31日までに発送されず、また4月に入りアマゾンから入手できないため注文をキャンセルする旨の連絡があったため。 他の書籍で代替できるか判断し、必要であれば同様の書籍を注文する計画である。
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