2011 Fiscal Year Research-status Report
「アマルティア・センの潜在能力」に基づく地域交通システムの評価
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23530284
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
佐々木 公明 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (10007148)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 潜在能力 / アマルティア・セン / 地域交通体系 / 交通弱者 / 住民の厚生 |
Research Abstract |
アマルティア・センの「潜在能力」を反映して地域交通システムの評価をする方法論を開発すると同時に、実際に宮城県内の2地域にそのモデルを適用し、分析を行なった。そのために、センの「潜在能力」に関する著作をすべて再検討し、交通システムの利用による個人の「潜在能力」を適切に定式化するための検討を行なった。ベッカー流の「家計生産関数」の概念を援用し、「潜在能力関数」を定式化した。そのモデルを先ず尚絅学院大学が立地する名取市のアンケート調査のデータに適用し、地域交通に関わる住民の潜在能力の測定を試みた。主要な結果は以下のようである。全サンプルを用いた分析では、運転免許が無い、車利用や送迎に制約があるといった所謂"交通弱者"であることの影響はさほど大きくはなかった。これは全サンプルを用いた"マクロ分析"では、構成割合が小さい交通弱者の福祉の側面が統計的に現出しにくいことによる。しかし、高齢である、免許がない、車利用に制約があるといった"交通弱者"をグループ分けしたサンプルによる分析では、車利用や送迎に制約があることの影響が非常に大きいことが明らかになった。これは、交通弱者にとっては、名取市の公共交通が十分なサービスではなく、それ故、公共交通サービスの利用から得られる潜在能力は低く、自分で車を運転できなくとも家族などの送迎に依存しながら自動車交通を利用する割合も高いことに起因している。またバスサービスの中では運行頻度の満足度の影響が大きく、特に交通弱者においてその重要度が高い。これは好きな時間に移動ができるという選択の幅が個人の福祉に大きな影響を与えることを示唆しており、地域交通システムの評価においても、"機能"と"機会"のセットによって決定される個人の潜在能力を評価することの重要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一応「潜在能力関数」を定式化し、実証分析に適用可能なものにすることができ、実際に統計的分析を開始したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進計画:栗原市の分析をまとめ、名取市の評価と日較する。さらに人口増加が大きい利府市、市町村合併により地域の面積が拡大した内陸部の登米市の調査を行い、その交通システムの評価を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
並行して関連文献を読み、研究を深めるので図書購入のための支出20万円、調査、学会報告の目的で使用する旅費40万円、アンケート調査のための費用30万円、調査・計算のための謝金30万円程度の支出を予定する。
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Research Products
(1 results)