2012 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアの経済成長と地域間経済格差:生産要素の地域データを用いた実証研究
Project/Area Number |
23530285
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Research Institution | Chiba Keizai University |
Principal Investigator |
片岡 光彦 千葉経済大学, 経済学部, 准教授 (20321713)
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Keywords | 国際情報交換 / インドネシア / 公共投資 / 衡平性 / 効率性 / 地域間不均衡 / 成長 |
Research Abstract |
世界第4位の人口と東西5千kmに及ぶ広大な国土を有する島嶼国家インドネシアは、独立以来、主要政策課題である経済活動の地域間不均衡の是正に尽力してきた。しかし、現在も、経済活動の6割が国土面積の1割弱のジャワ島に集中し、課題解決は道半ばにある。 加えて、この課題に貢献する研究は、資本の地域データの制約から多くはない。 本研究では、本政策課題の解決に資する政策的含意の提供を目的に、インドネシアの生産要素の地域配分状況を考察してきた。研究の2年目となる平成24年度では、資本の地域配分パターンを効率性と衡平性の観点から、ソロー成長会計モデルから独自に導出した投資の均等配分比率を算定した。本研究では、投資の均等配分比率を、各地域の経済成長に対する資本の寄与度が全国で均等となる時の投資の地域シェアと定義している。 同比率の算定には、インドネシアの各州の生産額を被説明変数、生産要素(労働と資本)を説明変数とするコブ=ダグラス型地域生産関数のパネル推計から得られたパラメータを用いる。地域関数の特定化では、政策変数である社会資本を含む資本のパラメータは各地域で異なり、利益最大化を基準として各地域に配分される労働のパラメータは各地域で同一であると想定した。これらのパラメータから投資の均等配分比率を算定し、実際の配分比率と比較して、各地域の資本の集中・拡散の程度を検証した。 分析の結果、アチェ、北スマトラ、リアウ、東カリマンタン州の資源産出地域では資本の収益性が高く、東西ヌサトンガラ州の後発開発地域やジョグジャカルタ州といった観光業に特化した地域では資本の収益性が低い結果となった。また、経済活動が集中するジャワ島地域では、経済危機の起きた1998年とその後の地方分権化の動きに一致するように、ジャワ島集中から島外への分散へという投資配分比率の変化が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成23年度には、 (1)州別資本データの再確認、(2)地域生産関数の推計、(3)確率的フロンティア(SFA)法やデータ包括分析(DEA)法による効率性の影響を考慮した生産性成長率の推計、平成24年度には (4)効率的な生産要素の地域配分と現実の賦存状況との比較の4項目を実施予定であった。平成24年度までの2年間で項目(3)を除き、ほぼ達成できた。しかし、項目(4)については、平成23年度に前倒しで行い、その研究成果から得られた「インドネシアの非効率的な資本の地域配分」という重要な観察結果に関して、平成24年度に前述のように追加的に検証を試みた。このように、当初の研究計画に無かった検証項目を追加したため、項目(3)が後回しとなり、作業がやや遅れた結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、過年度計画で先送りとした項目(3) SFA法やDEA法による効率性の影響を考慮した生産性成長率の推計に加えて、一部門地域CGEモデルを用いた政策シミュレーション分析を行う。また、分析おいて、労働・資本に加え、人的資本の地域データも検討すべきであるとの示唆を、多くの研究者から受けていることから、人的資本の地域配分に関しても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、概ね当初申請時の計画どおりである。しかし、23年度実施予定であったSFA法やDEA法による生産性分析の作業を後回しとしたため、今後、同分析に必要なソフトウエアLIMDEPを購入する。さらに、計量経済分析ソフトウエアSTATAや論文管理ソフトEndNoteのバージョンアップ費用も必要である。 次年度の研究費の使用計画は、概ね当初申請時の計画どおりである。しかし、23年度実施予定であったSFA法やDEA法による生産性分析の作業を後回しとしたため、今後、同分析に必要なソフトウエアLIMDEPを購入する。さらに、計量経済分析ソフトウエアSTATAや論文管理ソフトEndNoteのバージョンアップ費用も必要である。 また、研究最終年度となる今年度は研究の総括として、環太平洋地域科学学会(インドネシア)に加え、アメリカ南部地域科学学会(ワシントンDC)の海外学会報告を予定しており、海外渡航費用、学会参加費、英語論文校正費用が必要となる。 したがって、次年度の研究費の使用計画の内訳は以下のとおりである。 物品費20万円、旅費70万円、謝金20万円 その他6万円
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