2012 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性保全におけるローカルとグローバルの経済学的研究
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23530290
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60203874)
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Keywords | 生物多様性保全 / REDD+ / ワシントン条約 / 排出権市場 |
Research Abstract |
今年度は森林保全政策の1つであるREDD+(Reducing emissions from deforestation and forest degradation)の研究と、絶滅危惧種の保護を目的とするワシントン条約の有効性についての研究を行った。 REDDは、REDD+では、この制度が導入されていなかった場合の、途上国各国の森林からの排出量(ベースライン)を定め、制度導入による実際の森林からの排出量とベースラインとの差を、その国の排出削減量とみなす。そして、この削減量を何らかの方法で貨幣価値に転換し、途上国に金銭的な利益を発生させる。このREDD+の資金調達方法として有力視されているのが、二酸化炭素の排出クレジットとして、排出権市場で売買することである。今年度は、このREDD+の最大の問題点の1つである、公平性を満たすようなクレジットの取引率について研究を行った。過去に森林保全により努力した国ほどベースラインは不利に算定されるが、ある条件のもとでは、そうした国のクレジットの取引率が高くなるという優位性が出現することが示された。今後、論文として投稿を行う予定である(その一部は、韓国環境経済学会での招待講演で報告した)。 つぎに、ワシントン条約は、長らく絶滅危惧種を保護すると信じられてきた。しかし、近年、サイに見られるように、闇市場で売却するための密猟が激化し、個体数は再び減少し始めた。したがって、ワシントン条約の有効性は、闇市場の分析を行わなければならない。今年度の研究では、どのような条件のもとでワシントン条約を撤廃することが、種の保護の観点から望ましいかを導出した。この研究は、国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物多様性保全政策のいくつかの側面について研究が進捗している。特に、グローバルなメカニズムについては、複数の研究で学術雑誌に投稿が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最終年度として、昨年までの研究のいくつかの投稿と公刊を目指している。また、ローカルな側面として、マレーシアのアナツバメ管理の研究を進展させたいと計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度行う予定だった出張の予定を今年度に変更しているため、昨年度予算の残金が生じた。今年度は、この残額と今年度予算とを合わせて、マレーシアのサラワク州でのアナツバメの巣の取引に関する調査研究を主として行い、同時に、これまで研究した内容の公刊のために英語校閲などに支出を行いたい。
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Research Products
(2 results)