2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性保全におけるローカルとグローバルの経済学的研究
Project/Area Number |
23530290
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60203874)
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Keywords | 生物多様性 / 持続可能性 / 資金調達 / 伝統的知識 / 生物多様性条約 / 利益配分 |
Research Abstract |
最終年度は、自然資本としての生物多様性保全の資金調達の問題と、マレーシア・サラワク州の熱帯林の保全メカニズムの研究を行った。 資金調達の問題では、生物多様性喪失による影響を、標準的な生態系サービスの低下に求めず、代わりに人口増大と貧困が深刻化することに基づいて、議論した。さらに、世界で生物多様性を適切に保全し続けるために必要な金額についての研究をサーベイし、その資金調達手段として金融取引税の長所と短所を指摘した。また、金融取引税の導入根拠として、金銭的外部性に着目し、大沼(2014)にまとめた。今後のグローバルな制度設計に関する、より理論的考察に発展することを計画している。 また、サラワク州の熱帯林での先住民社会を調査した結果から、先住民社会の持続可能性を調べた。そのような彼らの生活様式には、今日の経済で高く有用性を発揮するものが伝承されている。それは、薬として利用するための生物資源についての伝統的知識である。Choy・大沼(2014)では、この側面に焦点を当てながら、マレーシアの先住民社会の自然共生のパターンに基づき、生物多様性を保全することの意義をグローバルな観点とローカルな観点から論じた。 本研究では、熱帯林保全について、製薬に着目したバイオプロスペクティング、炭素固定に着目したREDDなどのグローバルな取り組みの中での生物多様性保全を論じることができた(前者はOnuma (2012)で公刊した)。また、生物多様性条約自体をテーマとした研究も行った(大沼(2011,山村編))。一方で、兵庫県豊岡市のコウノトリ保全が与える社会的な効果も研究することで、生物多様性保全が地域社会に広く与える効果の一端を示すことができた(若森・大沼、2011)。
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