2013 Fiscal Year Research-status Report
発展途上国における開発援助の有効性とガバナンスに関する研究
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23530305
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
春日 秀文 関西大学, 経済学部, 教授 (40310031)
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Keywords | 開発援助 / 援助の有効性 / ガバナンス |
Research Abstract |
本研究は、発展途上国の経済開発や福祉向上を目的として供与される開発援助がどのようなメカニズムで成果につながるのか、援助の成果はどのような要因によって決定されるのかを明らかにすることを目的としている。平成25年度は、平成24年度までの研究成果に基づき、援助がどのような過程を通じて成果に結びつくかを明らかにするための実証研究を行い、そのために必要なガバナンスの指標を開発した。 開発援助の有効性が被援助国の特性、特にガバナンスに依存するかどうかは従来から多くの先行研究で議論されてきた。平成24年度までの研究においてもその点を考慮するために被援助国のガバナンスをいくつかの指標でコントロールし、援助の所得分配への効果を推定した。そこで用いたガバナンス指標は他研究でも広く用いられているものであるが、いずれもアンケート等の結果に基づいて作成された主観的な指標であった。平成25年度の研究においては、このような主観的なガバナンス指標ではなく、各国が経済開発を行うための政策遂行能力を計測する客観的な指標の作成を試みた。そのために、各分野の政府支出に関するデータを利用し、十分な配分を行っているかという点を評価した。具体的には、ミレニアム開発目標にも含まれる主要な分野である教育・保健および社会保障について、それらの分野に適切に資金を配分しているかどうかを評価するガバナンス指標を作成した。この指標は、援助の有効性の推定において各国の特徴をコントロールし、ガバナンスによって援助の効果が異なるかどうかを明らかにするために利用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、開発援助がどのように成果に結びつくか、どのような被援助国の特性が援助の有効性に影響するのかを明らかにすることである。そのために、援助とその成果の関係を説明する理論モデルの開発、政策・ガバナンスを評価する指標の開発、援助の有効性の実証研究を行う。 平成25年度の研究では、前年度までに行った実証研究の結果の頑健性を確認するために被援助国のガバナンス指標を作成した。先行研究においてもさまざまなガバナンスの指標は用いられているが、その多くは専門家へのアンケートに基づく評価であるため主観的であるという問題があった。ここでは、データに基づいて政策遂行能力を測る客観的な指標の作成を試みた。最初に、IMFのGovernment Finance Statisticsの政府支出データを用い、教育・保健等の各分野の支出が政府支出全体に占める割合を計算した。ただし、国によって資金を必要とする分野は異なるため、支出割合が高い国を単純にその分野への配分が高いと評価することはできない。その点を調整するため、ミレニアム開発指標の指標を利用して、分野ごとに同じ程度の発展度の国を比較し、その分野への配分を評価した。また、分野別の政府支出データが利用可能な国は高所得国が多く、発展途上国のデータには欠損値が多いという問題があった。発展途上国については、政府支出の代わりにOECDによる開発援助額のデータを利用して補った。開発援助は被援助国の要望に応じて行われることが望ましいため、必要な分野の援助を多く受け入れることができる国は政策遂行能力が高いと評価することが可能である。 上記のように、平成25年度はガバナンス指標の作成を行った。加えて、前年度までの成果である援助の有効性の実証研究については研究会での報告で得られたコメントを参考に改訂中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度に作成したガバナンス指標を改良し、それを利用した援助の有効性の実証研究を行う。平成25年度に作成したガバナンス指標は各国の分野別予算配分に基づいた指標であり、投入による評価といえる。投入を考慮するだけではその国の政策遂行能力の一部しか評価できないため、平成26年度は投入だけでなく成果を評価した指標を作成する。成果の評価にはミレニアム開発目標の主要分野の指標を利用する。投入及び成果に基づいて作成した指標を各国のガバナンスをコントロールするために用い、「援助の有効性はガバナンスに依存する」という仮説を検定する。一定の成果が得られた段階で、論文としてまとめ学会報告を行う。その後、他の研究者から得られたコメントをもとに改訂し、できるだけ評価が高い学術誌に採択されることを目指して投稿する。 また、援助とその成果の関係を説明する理論モデルについても引き続き開発を行う。特に、所得分配と教育に注目し、援助が有効となる条件を明らかにするモデルを開発する。これについても一定の成果が得られた段階で論文としてまとめ、学会・研究会で報告する。また、そこから得られる理論仮説を検定するためのデータを収集し、実証研究を行う。 平成25年度までの成果をまとめた改訂中の実証研究の論文についても査読者のコメントを参考にして評価の高い学術誌に採択されるよう投稿を続けていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究成果をまとめた論文の学会報告および投稿を次年度に行うこととした。そのため発生した繰越金については平成26年度において英文校閲費用の一部にあてる。 本研究において研究経費は主に図書・資料の購入、データの収集・加工、関連する分野の研究者との打ち合わせ旅費、国内外の学会での成果報告に用いる。平成26年度については前年度と同様に図書・データの購入と成果報告に研究費を使用する。 1)被援助国の特性を表す指標を作成するため、政府支出やガバナンスに関するデータ・文献をIMF, OECDなどの国際機関やその他の調査機関から購入する。また、CD-ROMやインターネットから入手できないものは内外の研究機関等を訪問し入手する。必要に応じてデータ加工のため研究補助を利用する。また、データの加工・統計処理に用いるソフトウェアの購入費用および年間保守費を計上する。 2)一定の成果を得られた時点で論文としてまとめ、学会で報告する。論文は海外の学術雑誌に投稿するため英文校閲の費用を計上する。また、学会での成果報告のための旅費を計上する。
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