2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530306
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
徳永 昌弘 関西大学, 商学部, 准教授 (30368196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 い生 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80319483)
田中 宏 立命館大学, 経済学部, 教授 (10163560)
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Keywords | 国際情報交換 / エコロジー近代化 / 移行経済 |
Research Abstract |
本研究の狙いは、1980年代以降の欧州で発展した「エコロジー近代化」(以下EMと略す)という理論的枠組みを用いて、計画経済から市場経済への移行経済諸国における環境ガバナンスの展開を実証的に検証した先行研究の成果と課題について、メタ分析という手法を用いて客観的に把握することにある。本年度は、昨年度に検索・収集したメタ分析対象研究のコーディング作業と計量分析の段階に進み、研究成果の一部は移行経済分野の学術誌に発表した。 メタ分析対象研究の数が多かった中東欧諸国に関する先行研究60点(すべて英語文献)の分析から開始し、各研究の文献属性をコーディングしたデータベースを作成したうえで、EMもしくは環境面での体制移行の評価、ならびにその過程で欧州連合(EU)が果たした役割に対する評価を従属変数に置き、各研究の文献属性を独立変数とする回帰モデルを構築した。今回のメタ分析対象研究は定性的性格のものが大半を占めたため、一般にシステマティックレビューと呼ばれるメタ分析の段階にとどめた(メタ統合・回帰分析や出版バイアスの検定は技術的に困難なため、順序プロビット推定量を用いた回帰分析を行った)。 以上の分析結果の考察から、著者の所属機関所在地、複数国研究・単一国研究の別、分析対象国・地域、論文のトピックス、著者の専門領域、掲載誌の学問分野などの文献属性が、中東欧諸国におけるEMの成果や環境面での体制移行の成否、ならびにEUが果たした役割に関する評価に有意に影響していることが判明した一方で、分析結果の解釈が困難なケースやサンプル数の少なさに起因すると考えられる技術的な問題が発生するなど、今後の研究に向けて改善の余地が必要であることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メタ分析の基礎段階の作業として必要な学術データベースを用いた文献検索・収集ならびにリスト作成の作業に予想以上の時間がかかったため、上記データベースに基づく分析・検証の作業と、その結果に基づく研究成果の発表に半年程度の遅れが生じている。本年度までに、中東欧諸国を対象にしたメタ分析は一定の成果を出したことから、次年度以降は、ロシアと中国を中心とするその他の移行諸国を対象にしたメタ分析に取り掛かると同時に、分析手法の改善に繋がる方法論上の検証もあわせて行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、以下の2点について重点的に研究を進めていく予定である。 第1に、現時点までの実証分析の成果の発表と議論を通じて、コーディング方法とメタ分析手法の改善を図る。現行の分析手法では、メタ統合・回帰分析や出版バイアスの検定はできないため、それが技術的に可能な定量的研究のみを選択するか、定性的・定量的研究を問わず、コーディングの仕方を工夫することで、何らかのかたちでEMに関するメタ回帰分析が可能なモデルを提示することを最終目標とする。 第2に、経済成長と環境負荷量の増減パターンが大きく異なる中国とロシアのEMを取り上げた先行研究のメタ分析(当面はシステマティックレビュー)を行う。両国の場合、経済事情や政治環境が中東欧諸国とは大きく異なるため、各研究の文献属性のコーディング設計から変更する必要がある。すでに、メタ分析対象研究の選定は終えているため、データベースの作成と並行しながらコーディング作業の調整を行う。なお、時間的余裕があれば、中国以外のアジアの移行諸国(モンゴルやベトナムなど)にも研究対象を広げることを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では、旧ソ連・東欧諸国を専門とした学術データベースのEastView Information Servicesを使用する予定であったが、より安価で操作性に優れた学術データベースであるIntegrumを使用することにしたことと、関係者の間の協議により複数アクセスが可能な共同利用の方が好ましいと判断し、それが可能な別経費で購入したことで、その差額分が次年度に持ち越された。 すでに中東欧諸国のEMに関するシステマティックレビュー(定性的研究に対応したメタ分析)の研究成果の一部は和文で発表しており、その改訂版を英文ジャーナルに投稿するために必要な校正費・投稿料として使用する予定である。あわせて、中国を始めとするアジアの移行国に関する先行研究のメタ分析には、語学面でのサポートが必要なため、適任な研究補助者への謝礼として使用する方向で話を進めている。
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Research Products
(14 results)