2011 Fiscal Year Research-status Report
金融危機による貿易構造の変化と株式市場の国際的な連動性の実証分析
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23530308
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
吉田 裕司 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 金融危機 / オーダーフロー / ティック分析 / 為替介入 / 円ドルレート |
Research Abstract |
ThomsonReutersのTickHistoryの契約を平成23年9月から行うことで、主要な国の株価インデックスや為替レートのティック頻度のデータを入手することができた。 本研究プロジェクトのデータ分析においては、個別の研究テーマに応じて、ティック単位、分単位、日次データとデータの頻度を対応させる必要がある。また、基盤となるデータはティック単位であるため、サイズの容量を抑えるために、一か月単位で一つのファイルとして分散保管している。そのため、研究目的に応じた「データ種類」、「期間」、「頻度」の要求に対して、分散ファイルから必要なデータベースを構築することのできる、『データ抽出ソフト』をプログラム言語を用いて独自に開発した。今後の実証研究では、この『データ抽出ソフト』を用いることになる。 金融危機以降の金融市場の分析の一つとして、円ドル市場の財務省・日本銀行の介入効果の分析を行った。ティック単位のデータを分単位に集計した後、為替レートがオーダーフローから受ける影響を推計した。そして、recursiveに推計して得られた予測誤差を用いることで、日銀の介入時期に関して分単位で推測できることを示した。また、この推測された分単位の日銀介入が、外国為替市場参加者のオーダー行動に影響を与えることを明確にした。この研究に関しては、長崎大学の須齋正幸氏との共同研究として進めている。 金融危機以降の発展途上国における株価の連動性の分析の対象として、アフリカ諸国を対象とすることを計画している。アフリカ諸国は、歴史的にも経済的にも欧州諸国と密接な関係があり、今回の金融危機の影響を強く受けている。既に研究方法に関する議論は進められ、現在必要なアフリカ諸国の金融データを整備している。この分析に関しては、大阪学院大学の杉本喜美子氏と松木隆氏との共同研究として進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ整備は継続中であるが、これは金融機関専門の高額なデータベースを個人で契約するために、一か月に入手できるデータ数に制限がある。そのため、契約開始月の2011年10月から2012年9月までの一年間で必要なデータを整備することが、当初からの予定通りである。完全なデータ整備は完成していないため、全ての研究に関しては着手ができない。しかし、個別の研究は開始できている。 「円ドル市場における日銀介入のtick分析」の研究は順調にすすみ、既に研究論文の第一校は完成している。この研究に関しては、神戸大学の六甲セミナーにおいて研究発表を既に行った。現在は、discussion paperにするための最終改訂を行っている。改訂後の論文を、5月の日本金融学会で発表することも確定している。 「アフリカ諸国の株価指数の連動性」に関する研究では、既に大半の株価インデックスと為替レートのデータは整備済みである。また、分析手法に関しては打ち合わせが進んでおり、データ分析に関しては、二変量GARCHモデルによるtime-varying相関係数による分析とDiebold and Yilmaz (2010)の分析手法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)円ドル市場における財務省・日本銀行の介入効果の分析に関しては、既に研究論文としてまとめられ、研究会において発表を行った。参加者からのコメント等を参考に改訂点は明確になっている。第一に、非介入日のデータを用いて同様の分析を行い比較することで、今回明らかにしたデータ特性が介入日の円ドル外為市場の特性であることを明確にすることで頑健性を確かめる。第二に、予測誤差の計測に関して、今回のCUSUMのrecursive residualだけでなく、介入によるシフトの影響を明確にすべく、予測誤差を計測するためのサンプル期間を移動させる方法(rolling windows)を用いる。第三に、注文の市場滞在期間に関する分析は、オリジナリティが高く、かつ他の金融市場の分析への汎用性が高いため、別の論文として完成させる。 (2)上記のテーマで、二つのdiscussion paperとして、5月・6月中に公刊する。為替介入の論文に関しては、5月の日本金融学会(確定)並びに9月のRutger Universisty(確定)で研究発表を行う。また、学会発表等を経て、国際学術雑誌に投稿する。 (3)アフリカ諸国における株価の連動性の分析に関しては、研究打ち合わせを進めていき、必要なデータ整備が完了次第、データ分析並びに研究論文の作成に取り組んでいく。データ分析に関しては、二変量GARCHモデルによるtime-varying相関係数による分析とDiebold and Yilmaz (2010)の分析手法を検討している。平成24年度中にdiscussion paperとして刊行して、国内・海外の学会において研究発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に計画していた海外における研究報告を行わなかったために、予算の内約20万円が未消化となり、平成24年度の新規予算と合算した研究費の使用計画を以下に行う。 最も大きな支出は金融関連の高頻度データの購入であり、ThomsonReutersのTickHistoryの契約を昨年度から継続して6ヵ月分行う。次の主要な支出としては、新たに金融・経済関係のより長期的なデータを入手するために、ThomsonReutersのDatastreamの一年契約のための支出を行う。膨大なデータ量になるために、大学院生等にデータ整備を依頼するためにアルバイト契約を行う。共同研究者が長崎と大阪に在籍しているため、研究打ち合わせのために複数回の国内出張が必要となる。研究発表に関しては、日本金融学会において二回、国際学会において一回の発表を行い、学術雑誌への複数の投稿料が必要となる。
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