2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530310
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
鶴 光太郎 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (80371178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細野 薫 学習院大学, 経済学部, 非常勤講師 (80282945)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 金融危機 / ミクロデータ / 累積収益率 / 累積超過収益率 / 株価 / M&A |
Research Abstract |
2008年9月のリーマンショック後、日本経済は激しい落ち込みを経験すると同時に、株式相場も大幅な下落をみた。このような大きなマクロ・金融ショックはもちろん個別企業のパフォーマンスを大きく悪化させることになった。その中で、その悪化の度合いは企業毎にどの程度異なっていたか、つまり、共通のマクロ・金融ショックが起こった時の企業パフォーマンスの異質性はどのようだったかを企業の株価データを用いて分析を行った。具体的な分析結果は以下の通りである。リーマン・ブラザーズ破たんの日から不良資産救済プログラム(TARP)に関するニュースが知れ渡る前までの期間(18日間)を危機の期間とした。累積収益率を用いた分析では、CRと企業の売上高・輸出額比率、総資産・借入金比率、そして外国人持ち株比率が負の相関があることがわかった。一方、市場リスクを調整した、累積超過収益率を用いた分析では、CARが輸出シェアや外国人持ち株比率といった変数とは相関がない一方、借入金比率(対総資産)および北米・アジア向け輸出シェアとは負の相関があるとの結果が得られた。したがって、今回の危機から得られた教訓としては、海外からの危機の伝播による影響をなるべく低く抑えるためには、企業の輸出市場の多様化、分散化が金融資産のポートフォリオ運用と同様にリスク管理の面から重要であることが指摘できる。これは今後の通商政策に対する新たな視点を示唆した結果といえよう。ただし、今回の分析はリーマンショック直後の株式市場における日本企業の将来パフォーマンスへの評価に基づいたものであり、実際の影響については、更に企業レベルデータを使った事後的パフォーマンスの検証が必要である。この他、平成23年度は、二つのM&Aに関する研究を行い、それらは何れも査読付きジャーナルに論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の「研究の目的」に記載した株価データや企業のパフォーマンスデータなどデータベースの作成に関してはは順調に進展している。加えて、グローバル・ショックと企業行動・パフォーマンスに関する理論分析についても、ディスカッションペーパーとして第一段階目の分析の結果を公表している。おおむね、本年度の研究目的に示した計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、国際金融危機の影響を企業の株価関連データで検証したが、危機後一定期間を経て、金融危機の実際の影響が反映されているとみられる2008年度、2009年度データが現時点では得られるため、今後は、事後的な企業パフォーマンスに対する影響を分析し、上記の株価関連データへの影響との整合性(株式市場は個別企業への影響を正しく予測できていたかどうか)についても検証する。その際、一般的な指標である総資産利益率、総資産売上高比率等への影響とともに、雇用関連指標(形態別雇用者数)への影響についても分析する。また、企業パフォーマンスに対する説明変数としては、これまでに用いている企業属性の他、その企業が属する産業の属性(産業別外部資金依存度、産業の需要に対する反応度、貿易に対する反応度など)も加えて推計し、金融危機によってどのような企業や産業に影響が大きく及んだのかを実証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰越はデータ整理のための謝金の支払いが年度内では当初の予定よりも少ない額の支払いになったため。データベースの利用、データ整理・分析に対する謝金、研究成果の発表、意見交換などのための旅費などへの研究費使用を計画。
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Research Products
(4 results)