2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530310
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鶴 光太郎 慶應義塾大学, 商学研究科, 教授 (80371178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細野 薫 学習院大学, 経済学部, 教授 (80282945)
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Keywords | 金融危機 / 需要ショック / 派遣労働 / 雇用調整 |
Research Abstract |
本研究は、負の需要ショックが企業の従業員構成に及ぼす影響を、企業ミクロデータを用いて分析した。従業員構成と企業の売上については、双方向の因果関係がありうるが、本研究では、2008-2009 年のグローバル金融危機を需要ショックの自然実験として活用し、グローバル金融危機後の日本の輸出企業の従業員構成の変化を、派遣労働者のシェアの変化に焦点を当てて分析した。その際、過去の派遣労働者のシェア、流動性資産の比率、および売上の不確実性の影響についても分析した。この結果、危機前の輸出比率、派遣労働比率の水準および増加幅が高い企業ほど、危機後に派遣労働者比率がより大きく低下したこと、逆に、危機前の流動性資産比率、および、売上高の変動率が大きい企業ほど、派遣労働者の比率の低下幅は小さかったことが明らかになった。これらの結果は、派遣労働者が、需要ショックに対するバッファーとして機能していることを示唆している。 以上の研究から導き出される政策的インプリケーションは以下の通りである。派遣労働者をある程度需要ショックのバッファーとして活用することは企業の効率的な生産調整の視点から望ましいが、それが正規労働者の雇用調整が困難であることを理由に派遣労働者に過度の雇用調整の「しわ寄せ」が行われているとすれば問題である。「失業なき労働移動」を達成できるような正規労働者の雇用調整のあり方を検討していくことも重要な政策課題である。また、企業におけるバッファー活用と派遣労働者の雇用安定を両立させるためには派遣元での雇用安定がポイントとなる。
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Research Products
(5 results)