2013 Fiscal Year Annual Research Report
発展途上国における現金移転プログラムの有効性に関する研究
Project/Area Number |
23530313
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
児玉谷 史朗 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00234790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅見 靖仁 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60251500)
URANO Edson 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (80514512)
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Keywords | 国際研究者交流 / ブラジル、ケニア、フィリピン / 社会政策 / 国家財政 / 貧困削減政策 |
Research Abstract |
期間全体を通じた研究の目的は、発展途上国の貧困対策として近年注目を浴びるようになった現金移転事業の有効性と問題点をアジア、アフリカ、中南米の3地域の事例を比較研究することによって明らかにすることであった。海外の最先端の議論を再検討しつつ、日本の援助機関に具体的な政策提言できるような成果を目指した。初年度は中南米の事例としてブラジルを、第二年度はアフリカの事例としてケニアを、最終年度は、アジアの事例としてフィリピンをそれぞれ取り上げ、現地調査した。研究実施計画に書いたように、本研究のメンバー3人が全員で三つの地域で現地調査を実施した。最終年度はフィリピンの現金移転事業としてパンタウィド・パミリャ事業について調査した。期間全体としては、対象の3ヵ国を比較して次のような知見を得た。3国では、経済・財政規模、1人あたり所得水準では大きな違いがあるが、3国とも貧富の格差が大きく、貧困は政治的に重要な問題となっている。ブラジルは、経済発展が進み、所得水準も高いが、貧困の問題は解決されていない。民主化が進み、穏健左翼政権が政権の座についたことも一因となって、公共政策、社会政策によって貧困問題を解決するべきだとの政治的環境の変化が現金移転事業の導入に導いた。ブラジルのボルサ・ファミリアは総合的な条件付き現金移転事業であり、省庁縦割りを越えた一本化と地方分権化によって効果的な事業の実施をしている。フィリピンはブラジルの事業に類似の条件付き現金移転事業を2008年から実施しているが、財政規模、所得水準、行政能力はブラジルより低い。ケニアはフィリピンよりもさらに財政力、所得水準、行政能力が低い。このため、現金移転事業も全般的なものではなく、エイズ孤児問題や食料不足問題等に特化し、地域も特定化することで、対応している。
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