2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530316
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂出 健 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80272889)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 戦略的通商政策 / 産業政策 / 航空機産業 / 生産システム / 武器輸出 / WTO / 経済摩擦 / アメリカ |
Research Abstract |
第一に。航空機産業における国際産業政策調整のプロトタイプといえる1971年のイギリス・ロールスロイス社とアメリカ・ロッキード社のワイドボディ旅客機トライスター開発をめぐる両社の連鎖倒産危機に対する米英両政府の対応を研究し、その成果を、European Business History Association(欧州経営史学会)アテネ大会にて、論文発表・研究報告を行った。第二に、1970年代の航空機産業における国際産業政策調整の事例として、超音速旅客機コンコルド開発をめぐる英仏両政府の交渉過程、イギリス・キャラハン内閣の航空機産業政策がアメリカとヨーロッパの狭間でどのように対応するか検討した。第三に、WTO(世界貿易機関)における米欧間の商業用航空機開発に対する補助金をめぐる論争を調査するため、ボーイング・ジャパンへのヒアリングを通じてボーイング本社担当部署の連絡先などの基礎情報を入手した。第四に、ボーイング社・エアバス社に炭素繊維を納入している東レへのヒアリングを通じて、航空機産業の現状について調査を進めた。第五に、経済産業省航空機産業課へのヒアリングによって、日本政府の航空機産業政策の実情、三菱重工MRJへの期待等について調査した。第六に、戦略的通商政策・軍事産業基盤についての理論的フレームワークを構築するべく、Krugman, Brander, Spebcer, Hartleyなどの先行研究を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、航空機産業における国際産業政策調整のプロトタイプである1971年の航空機エンジンメーカー、イギリス・ロールスロイス社とアメリカ・ロッキード社の連鎖倒産危機に対するイギリス・ヒース政権の対応を「巻き込み(bail in)」型と規定し、国際学会で報告・発表できたのは大きな成果といえよう。第二に、現状分析においては、東レ・ボーイングジャパン・経済産業省などへのヒアリングを通じて、近年における航空機産業の動向についておおまかな動向を知ることができた。他方、ボーイングジャパンを通じてボーイング本社に工場見学を申し入れたが、営業上の事情を理由に断られた。この点、防衛産業としての一面をもつ航空機産業調査の困難さに直面した。第三に、超音速旅客機コンコルドの英仏共同開発における英仏間の齟齬と調整、1978年におけるイギリス・キャラハン政権の航空機産業政策についてはイギリス国立公文書館において史料調査を行い、一定の成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、超音速旅客機コンコルドの英仏共同開発をめぐる英仏政府間の齟齬と調整については、European Business History Association(欧州経営史学会)のパリ大会にて、論文発表・研究報告を行う。第二に、イギリス・キャラハン政権の1978年の航空機産業政策については、しかるべき媒体を選び、英文にて、研究成果の公表を行う。第三に、WTOでの商業用航空機に対する補助金をめぐる米欧間の摩擦について、アメリカ側(USTR、ボーイング社)、ヨーロッパ側(欧州エアバス社)双方の主張を確認する。また、WTO航空機パネルでの2012年のボーイング社に対するアメリカ政府の補助機の「クロ」判定の正否について、WTOの判断の背景にある正統性のロジックについて検討する。第四に、日本航空機産業の自立的基盤尾方向性をさうるため、日本の航空機諸メーカー、経済産業省・防衛省に対するヒアリング調査をおこなう。あわせて、武器輸出三原則緩和の方向性についても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超音速旅客機コンコルド共同開発をめぐる英仏両政府の齟齬と調整について、European Business History Association(欧州経営史学会)において論文発表・研究報告を行うため、旅費・英文校閲を計画している。また、イギリス・キャラハン政権の1978年の産業政策についての研究成果を英文で発表するために英文校閲を利用する。東レ・ボーイングジャパン・エアバス日本駐在・三菱重工・経済産業省・防衛省において、航空機産業・武器輸出三原則緩和などについてヒアリングを引き続いて行うための旅費が必要である。また、戦略的通商政策などの理論的フレームワークに関する文献を購入する必要がある。
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Research Products
(1 results)