2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530323
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
塩原 俊彦 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 准教授 (60325397)
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Keywords | ロシア / 中国 / エネルギー / 軍事 |
Research Abstract |
ロシアと中国の石油と天然ガスの現状分析と将来展望を行った。同時に、石炭、原子力、軍需産業に関する基礎的データを収集した。 とくに、シェールガス革命によるガスプロムへの影響について詳細に調べた。ロシアでは、欧州向けガス輸出が減少し、アジアへの積極的な進出が課題となっている。その手段として、LNG輸出の拡大が計画されている。同時に、懸案である中国へのガスパイプラインの敷設が改めて問題化している。日本との間では、ウラジオストクにおけるLNGのガス化工場建設やターミナル整備が計画されている。これに対して、中国はトルクメニスタンからのガスパイプラインを利用したガス輸入の拡大などを進めている。これに対応して、CNPC(中国石油天然気総集団公司)を中心とする中国企業の分析も行った。 加えて、ロシアのロスネフチ、ノヴァテクの分析、中国のPetroChina、Sinopecの分析も行った。 エネルギー安全保障だけでなく、軍事面の安全保障の比較研究も継続して行った。とくに、航空機産業をめぐってロシアと中国の産業構造上の相違点などについて考察し、すでに研究成果を公表した。加えて、サイバーテロをめぐる国際条約締結に熱心に取り組んでいるロシア側の専門家との会合やインタビューなども行うことができた。 こうした研究成果から、2012年10月、ロシアに招聘され、プーチン大統領とも会食したことを特記しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の場合、「ロシアと中国のエネルギー企業比較と中長期予測」(仮題)を書くための準備産業を行った。企業集団、その集団構成、その株式関係、配当、配当性向、借入先、IPOの有無、政治家との関係などをまとめ、比較考察するものだが、考察の中心をロシアのガスプロムと中国のCNPCに絞ることで、ある程度の比較は可能となっている。ロシア側に重点を置きながら、問題点を明らかにしつつある。 具体的には、シェールガス革命によるロシアおよび中国への影響が重要となる。中国の場合、国内に相当量のシェールガスが埋蔵していると思われるが、その開発には大量の水が必要であり、採掘見通しは必ずしも明確ではない。ロシアはシェールガス開発により、在来型ガス輸出で打撃を受ける側だが、それに対しては、LNG輸出の拡大で対処するように思える。いずれにしても、エネルギー安全保障は、天然ガスだけでなく、石油や石炭、さらにウランなどにもかかわっているため、多角的な分析が必要であり、不足分を補うべく参考資料の収集などを継続中である。 軍事面の安全保障については、とくに中国の海軍力増強に注目し、ロシアと中国の造船業の比較を行うべく資料を集めてきた。2013年夏に研究成果を公表できる状況にある。最新のロシアの国防状況については、国防費、武器輸出、国防発注の状況について、論文発表できる状況にある。 加えて、「人間の安全保障」の観点から、敵と味方を区別するために行われる贈与と返礼に基づく「腐敗」についても論文を用意しており、新しい角度から安全保障を提示できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
安全保障のなかで、エネルギーについては、とくに原子力の利用に関する問題について力を入れて研究する。同時に、シェールガス革命がガスプロムに与える影響が大きいため、この問題にかかわる考察も進めたい。ガスプロムはロシアの政治にも深くかかわっているだけでなく、パイプライン敷設をめぐって国際的なパワーポリティクスに直結しているため、分析を急ぎたい。ノルドストリームの増強、サウスストリームの着工などがウクライナとロシアとの関係に与える影響などについて研究を進めたい。加えて、中国へのパイプライン敷設問題、さらにLNG工場建設など、アジアとの関連についても、さらに研究を深めたい。 軍事面については、サイバー空間をめぐる諸問題をロシアと中国を中心に比較する作業を継続したい。すでに、ある程度まで研究は進んでいるが、変化が著しい分野なので、研究のフォローアップに心がけたい。軍事費、武器輸出、国防発注、軍産複合体については、これまでの研究成果の精緻化と公表を行いたい。 「腐敗」の問題も「人間の安全保障」という観点からきわめて重要性を高めている。このため、腐敗問題についても、安全保障と関連づけながら、ロシア、中国だけでなく、米国のロビイスト問題などとの比較をも射程に入れた研究を行いたい。なお、この問題については2014年2月末までに英語の本を刊行することがすでに内定しているので、このための準備も本格化する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
若干の繰越金が発生するので、書籍購入にあてる。
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Research Products
(5 results)