2013 Fiscal Year Annual Research Report
所有権と賃借権の権利関係が既存住宅の売買と賃貸借の両市場に与える影響の経済分析
Project/Area Number |
23530336
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
瀬下 博之 専修大学, 商学部, 教授 (20265937)
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Keywords | 住居選択 / 賃借権保護 / 居住権 / 既存住宅取引 |
Research Abstract |
既存住宅の効率的な有効利用を図るためには、その売買市場と賃貸借市場を十分に機能させる必要がある。両市場の機能を十分に発揮させるためには、所有権と賃借権の権利内容と対抗関係を明確にする必要がある。本研究では、所有権と賃借権の権利配分と対抗関係が、既存住宅における賃貸借市場と売買市場に相互にどのように影響し合っているかという点について、経済学的な観点から分析した。 その結果、賃借権を保護すると既存住宅市場で情報の非対称性の問題が深刻化し、その市場を停滞させかねないことが示され、逆に保護をなくすと既存住宅市場の情報の非対称性の問題が緩和されることが示された。しかも分析結果から、居住権を保護するという目的のためには、賃借権を保護しない方が少なくとも事前の観点では、居住者が低いコストで安心して居住できることが示された。これは既存住宅市場が活性化することで安価に住宅を購入し所有権を取得できるからである。 このような分析結果に基づいて日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスといった先進諸国の住宅市場などと比較してみると、賃借権保護の強い国では既存住宅市場が停滞し、弱い国で活発な取引が行われていることが明らかにされた。 これらの分析結果は、居住権保護のためには賃借権保護は必ずしも正当化されず、むしろ安価な既存住宅の市場を活性化させることが重要であることを意味しており、政策的な観点からは、それを購入できるための住宅ローン市場の整備が重要であることを示唆している。 また、付随した研究として既存住宅や土地などの不動産ストックの取引を阻害している要因について税制面から検討した。
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