2012 Fiscal Year Research-status Report
技術革新と希少な公共資源の配分政策~無線周波数及び空域を例に~
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23530340
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
湧口 清隆 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (00386898)
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Keywords | 経済政策 / 航空管制 / 電気通信 / 無線周波数 / 制度論 |
Research Abstract |
本研究は、無線通信及び航空管制分野を具体例として挙げ、希少な公共資源の利用技術において技術革新が生じる場合に、政府の資源配分制度はどのように変化するのか、あるいは変化すべきなのかを、公共経済学のアプローチから考察することを目的としている。 平成24年度には、23年度に収集しきれなかった各国・地域の周波数割当制度、電波利用料制度、航空管制システム及び航空機への課金制度についての情報収集を実施した。とくに、情報入手の効率化を図るために、主要国の航空路に対する課金制度について、国際民間航空機関(ICAO)の航空輸送局(ATB)に協力を求め、長谷川通氏及びMr. Julian de la Camara氏にヒアリングを実施した。また、同氏らの協力で、8月と9月の2度に分けて、半世紀にわたる重要国の航空路の使用料金の料金表データを複写・入手した。 11月には国際通信学会(ITS)の世界大会で"Effects of a Spectrum Auction on Mobile Operators' Choices of Technology"と題する報告を行い、移動通信サービスの提供に当たり、周波数資源の投入量と機器性能の向上との間にトレード・オフの関係があること(シャノン・ハートレーの法則)に着目し、周波数オークションの導入により周波数価格が変化すると、携帯電話事業者が両投入要素をどのように変化させるのかを、部分均衡モデルで説明した。この報告内容は、"Communications & Strategies"に投稿し、24年度末時点で査読中である。また、25年3月に、『相模女子大学紀要』(76C)に「『経済学のなかの燈台』の現代政策上の意義~わが国の電波利用料制度をめぐって~」を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
航空管制分野に関して概ね必要なデータがほぼ入手できたことから、分析段階に入ることができた。また、無線通信分野では制度の変化が早いことから逐次情報更新が必要であることから、継続的にデータ収集を進めているが、分析段階に入っている。現時点では、分野別の分析、報告にとどまり、それらを統合した包括的な分析、成果報告の段階に達していないが、研究期間のちょうど半ばであり予定どおりの展開である。 専門家による研究の外部評価は校務日程上の都合で行えなかったが、無線通信分野については総務省の研究会で発表しているほか、25年6月に国内外の学会で研究報告を行うことから同等の評価を得られるものと認識している。 以上の点から、研究は概ね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、無線通信、航空管制、各分野において、資源利用技術の物理的・経済的特徴と資源配分制度との関係性を中心に分析に行う。また、新技術の物理的・経済的特徴を把握し、現行の資源配分制度を適用した場合の問題点を明確化するとともに、望ましい資源配分制度の検討に着手する。この検討も主に文献を用いて行うが、新しい技術の物理的特徴を知るために、機器メーカー(無線通信機器メーカー、航空機メーカーなど)への見学を予定している。 25年6月にはAir Transport Research Society(ATRS)の世界大会、8月には国際通信学会(ITS)のアフリカ・アジア・オセアニア地域大会で、航法の技術革新と空域の利用制度に関する報告と電波利用料制度に関する報告を行う。 26年2月を目途に、研究成果の国民への発信の観点から、大学に専門家を招いて討論会方式の公開セミナーを行う。 最終年度となる26年度の末には、これらの研究を総括し、書籍として出版できるように、25年度後半から準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ATRS世界大会及びITS地域大会の参加費及び旅費のほか、これらの大会で関係づくりを行えた航空管制機関及び電波監理機関へのヒアリングにかかる旅費の支出を予定している。また、必要に応じて電波政策に関する研究報告書等(とくに周波数オークション関連)を購入するほか、書籍購入、文献複写等に支出する。また、専門家を招いた討論会のための専門家への謝礼や、入手データの効率的な整理のための学生アルバイトへの謝礼、英文論文投稿時の英文プルーフ費等の支払いも予定している。 当面、国内外での学会報告の実施に努め、研究内容に関する評価及びコメントを広く聴取し研究成果のまとめに活かす方針である。
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