2014 Fiscal Year Annual Research Report
潜在能力アプローチの臨床的適用プログラムの設計ーー福祉経済学の試みーー
Project/Area Number |
23530344
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
後藤 玲子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70272771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DUMOUCHEL PAUL 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (80388107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 社会的選択ルール |
Outline of Annual Research Achievements |
アマルティア・センの提出した潜在能力アプローチは、個体としての個人の社会科学的分析を通して、社会制度・システムの問題を捉え、その改善方法を明らかにするとともに、困難を抱える個々人への支援の方法を示唆する。それは、医療・福祉・交通などの政策立案において、また、ケアや相談などの臨床的場面において実践的に用いられている。本研究は、この潜在能力アプローチのさらなる臨床的展開を目的とし、その理論的・哲学的基礎を探究することにある。 研究目的の遂行にあたって、本研究は、主に2つの課題に取組んだ。第一は、効用アプローチと資源アプローチに対する代替案としての潜在能力アプローチの特性を明らかにするために、数理的定式化と哲学的探究を行なうこと。第二は、医療・福祉・交通などの政策立案に資するように、潜在能力アプローチを操作的に定式化する方法を明らかにすることである。第一に関しては、社会的選択理論や厚生経済学、経済哲学を基にした規範経済学の手法を用いて取り組んだ。第二に関しては、医療・福祉・交通、各研究グループとの協同を図りつつ、調査と実践的検証を重ねた。 得られた結果は5つある。第一は、複数の不利性グループの分権的意思決定とパレート条件を尊重しつつ、すべての個人の基本的潜在能力の保障を目的とする非完備的かつ推移的な社会的集計ルールを定式化したこと。第二は、地域公共交通の設計に適用可能な潜在能力アプローチの操作的定式化をなしたこと。第三は、視覚障碍者の交通潜在能力保障政策の設計方法を明らかにしたこと。第四は、メイン機能とサブ機能という概念をもとに個人の潜在能力の構造を捉えたこと。第五は、潜在能力の評価を生産関数と主観的選好の両方で捉える枠組みを考案したこと。以上の研究を通じて、潜在能力アプローチを社会制度・システム設計の経済学的ツールの1つとして活用する道が示唆された。
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Research Products
(5 results)