2012 Fiscal Year Research-status Report
生産拠点としてのタイと日本の戦略-アジアの大物流センター構想-
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23530350
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Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
野北 晴子 広島経済大学, 経済学部, 教授 (70228302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢野 栄次 久留米大学, 経済学部, 教授 (00152265)
益村 眞知子 九州産業大学, 経済学部, 教授 (80199710)
矢野 生子 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (00268781)
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Keywords | 物流 / インドシナ東西回廊 / 日本企業 / ASEAN / 援助 / 高速鉄道 / 地域格差 / 産業空洞化 |
Research Abstract |
当該年度の現地出張では、タイの大洪水の被害と復旧の状況についての調査が中心となった。その中で、以下のようなことが明らかとなった。 ①洪水にも関わらず、撤退する企業はほとんどなく、洪水後に新規参入する企業も少なくない。②洪水で浸かったアユタヤ周辺の日系企業の多くは、拠点を洪水の心配の少ない地域へ移転している。洪水が、タイの産業配置を大きく変えている可能性がある。③日本のタイへの直接投資収益率は、大洪水の発生した2011年は下がったものの、欧米、中国、周辺東南アジア諸国より高い。④タイの産業集積は、日本企業によるところが非常に大きい。さらに、通貨危機後、日本の援助を受けたタイ政府の自動車産業を中心としたサプライヤーの育成強化策の効果により、日本的なものづくりは日本よりむしろタイで可能となっている。⑤今後、さらなる日本の対タイ投資の増加が見込まれる一方、現地の産業集積の結果、中間財の日本への波及効果が薄れる可能性がある。⑥タイの隣国ミャンマーへの日本や欧米諸国からの投資解禁によって、インドシナ半島の東西回廊の早期実現の期待が高まっている。その東西回廊を利用した物流網は、太平洋側とインド洋側を結ぶことになり、タイがその中心となる可能性は非常に高い。しかし、ミャンマー側のみならずラオスやカンボジアにおける課題が多く、東西回廊実現に至るにはまだ時間がかかると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一昨年に発生したタイの大洪水が、本研究課題であった①日本経済(企業)にとってのタイ戦略的重要性、②タイのアジア物流センターとしての現状と課題、を明らかにすることとなった。そのため研究計画をより進めて、下記のような目的に沿った研究計画を立てることになった。 ・インドシナ半島の東西回廊の実現可能性とアセアン地域内でのFTAを考慮し、タイの物流センターとしての役割と機能、そしてそれによる地域格差の是正を考える。 ・太平洋側とインド、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ、インドシナ半島における高速鉄道とそれによる物流のグランド・デザインを描く。そして、その実現に必要な日本の援助の在り方を考える。 ・日系企業の投資の増加とタイの産業集積による、日本経済への影響を分析する。 ・タイのアジア大物流センターとしての機能が、日本国内に大きな波及効果をもたらすような政策を考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に引き続き、次のような方策に基づいた研究計画の具体策を立てる予定である。 ①タイを中心としたASEAN諸国における日本企業の動向と日本政府の支援の現状と問題点を把握する。 ②物流を中心とした高速鉄道によるインドシナ半島における東西回廊を考える。 ③日本とタイ、およびその周辺アジア諸国との経済相互関係を再確認し、日本への波及効果の大きさについて分析する。 タイが今後、アジアの大物流センターとしての機能を強化し、実際にその役割を果たせるかどうかの鍵は、インドシナ東西回廊である。また、タイ政府は日本に対し、その西端であるミャンマーのダウェー共同開発を求めている。東西回廊は、日本の経済産業省、ジェトロが中心となって進めてきた。本研究では、道路ではなく、高速鉄道を使った物流大動脈としての回廊を提案したい。このためには、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーの動向調査、日本の援助の在り方について検討する必要がある。しかし、当該研究では資金的制約が大きいため、今後、さらに研究を推進するための事前調査になる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全て次年度の現地調査費に使用したい。昨年度に引き続き、研究協力者の出張費を確保するため、また円安による海外経費の増加の可能性から、次年度に使用できるように配慮した。
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Research Products
(2 results)