2011 Fiscal Year Research-status Report
人口減少時代における地方圏での複数居住の大規模成立・継続の可能性についての研究
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23530352
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Research Institution | Takamatsu University |
Principal Investigator |
正岡 利朗 高松大学, 経営学部, 教授 (60249604)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 複数居住 / 二地域居住 / 移住 / 人口減少 / 多自然居住地域 / 地域間交流 / 地方圏 |
Research Abstract |
本研究は、「複数居住」が多自然居住地域の人口減少対策として有効であると認識し、地方圏内における大規模成立及び継続の可能性について検討するものである。そこで、複数居住を人々の「新たな居住スタイル」として位置づけ、これにより「地方圏における限られたマンパワーの相互融通」を実現させるためには、可能な範囲でどのような条件整備が望ましいのかを、都市住民に対する促進策、多自然居住地域についての受け入れ策のそれぞれの観点より明らかにすることを目的とする。そして、地方圏における複数居住の円滑な実現には何が必要であるのかという情報を整理して提供できることが本研究の成果となる。 この課題を達成するために、以下の7つのテーマについて、逐次研究を実施していく計画である。「(1)実践を希望する地方圏の都市住民のうち、どのような層が実践を継続できるのか」、「(2)複数居住を人口維持・確保策に導入した地方自治体等の現況や意識構造」、「(3)複数居住先として、選定されやすい地域や住宅の理由」、「(4)従たる住宅について、その取得及び処分の容易性の確保」、「(5)複数居住の継続について、「集落支援員制度」のようなソフト的支援施策の必要性」、「(6)複数居住の実践者と地域住民との交流の促進策」、「(7)複数居住の大規模実践による社会・環境問題発生の可能性」 なお、それぞれのテーマについて、知見の導出には、ヒアリング調査、アンケート調査の手法を主として活用する。平成23年度においては、上記のうち、主として(1)及び(2)について、ヒアリング調査を可能な限り多く行うことにより、知見の蓄積を図ろうとした。(ただし、後述する理由のため、達成度は低い結果となった。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始直前の平成23年3月末にひどい腰痛に見舞われ、約半年間、現地に出向く出張ヒアリング調査が不可能となり、計画の遂行がかなり遅れる結果となってしまった。同年10月以降は出張に耐えられるように回復してきたので、遅れを取り戻すべく、鋭意ヒアリング調査を実施している。 上記各テーマについて、平成23年度末までにおいて、(研究期間4年間を通じての)個別の達成度は、概ね(1)が10%、(2)が30%、(3)が20%、(4)が10%、(5)が10%、(6)が20%、(7)が20%というものである。 なお、ヒアリング調査が不可能である前半期においては、全国の複数居住に関連する施策やトピックについて、自ら整理し(そのため、このことに要する人件費を節約できた)、かなりの程度データベース化を行っている。これにより、ヒアリング先の選定等が容易になった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、多くの地方自治体等が重視しているのは、複数居住ではなく移住であるため、ヒアリング調査先の選定、内容については移住に関するものが中心とならざるを得ない。そして、これより得られた知見を複数居住に当てはめて類推するという手法を採らざるを得ない。 ただし、このことはとくに想定外というわけではなく、「地方圏での移住施策には限界があり、自地域内での複数居住施策を中心にした方が望ましい」という当方の主張を各ヒアリング先に対して打診し、議論していくことで、主張の堅牢性をより高めていくことができるものと思われる。 なお、昨年度のヒアリングで得られた知見の一つとして、移住希望者側に「食の安全性追求」、「原発からの避難」を理由にする層が顕著に増加していることが挙げられる。これは、当初想定していなかった状況であり、さらに各都道府県等が実施する「ふるさとセミナー」等への参加者は、以前主流であった高齢者層にとって代わり、若~中年層が多くを占める状況が常態化している。そこで、これらのことに十分な注意を払う必要があるものと思われる。 また、「NPO法人ふるさと回帰支援センター」が運営している「ふるさと暮らし情報センター」は、数ある移住情報チャネルの中で、最近は一頭地を抜く存在である。そこで最新の全国的な移住、複数居住の現状把握については、同センターに協力を仰ぐ所存である(すでに打診済)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当面はヒアリング調査を重点的に実施し、知見の蓄積を図りたい。したがって、「旅費」を中心に研究経費の執行を行う所存である。また、上述した「ふるさと暮らし情報センター」において、当方の研究内容にとって有益なアンケート調査が現在実施されており、その活用により、自ら計画しているアンケート調査の一部が代替できる見通しである。 また、当初、平成24年度は上記各テーマのうち、「(3)複数居住先として、選定されやすい地域や住宅の理由」及び「(4)従たる住宅について、その取得及び処分の容易性の確保」について、重点的に研究する計画であったが、ヒアリング調査先で得られる知見は、純粋に(3)及び(4)に関連する内容だけとは限定されず、他の各テーマに関わる内容も得られるものである。そのため、ヒアリング内容について厳格な分離は行わず、柔軟に対処していきたく思っている。
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