2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530357
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
大野 正智 成蹊大学, 経済学部, 教授 (60302311)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際収支 / 国際貿易 / 発展段階 |
Research Abstract |
世界各国の対外純資産の研究として、世界各国の国際収支、及び、対外資産・負債の状況について実証分析を行った。データは、世界175カ国の過去30年分についての主要マクロ統計を、IMFのFinancial Statistics、Balance of Payment Statistics、及び、Word Economic Outlook Databaseから収集した。研究内容は、クローサーが分類した国際収支の6つの発展段階について、収集データ(175カ国×30年)を対象に、各国各年でどの段階にあるかを分類した。そして、各段階における一人当たり実質GDPの平均値が他の5段階の平均値と相互に異なるのかを統計的に対比較した。これは多重比較法と言い心理学・教育学でよく用いられる方法を本研究で経済学に適用した試みと言える。この結果、第1から第6段階にかけて、一人当たりGDPは、単調増加するものではなく、第4段階を頂点とすることが確認できた。この非単調な傾向は、過去の研究と整合的な結果となった。本研究は、成蹊大学経済学セミナー、及び、日本金融学会秋季大会にて報告した。 グローバルな低価格競争と国内価格についての研究として、日本の貿易収支におけるJカーブ効果の実証分析を行った。入手したデータは、IMFのFinancial Statistics、及び、Direction of Trade Statisticsである。このデータを利用して、貿易収支と交易条件との関係について、時系列分析の方法を使って研究を行った。これによると、日本の対世界貿易のJカーブの形状は、2000年以前では対米貿易のJカーブ形状に大きく影響されていたが、2000年以降は対中国貿易や対産油国貿易とのJカーブ形状に少なからぬ影響を受けていたことが明らかになった。この研究は日本金融学会春季大会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界の対外純資産に関する研究では、GDPと経済の発展段階が非単調な関係にあることが明らかになった。この結果によって、この分野の過去の研究結果の解釈がより明確化され、その整合性が確認された。この研究成果について、2か所で論文報告を行いそこで得たコメントに基づき改訂を行っている。 グローバルな価格競争の研究では、日本の貿易において、近年、中国や産油国との貿易の影響力が強くなっていることが、統計的検証によって明らかになった。この研究成果について学会報告を行い、そこで得たコメントに基づき改訂を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、計画に比べ、旅費が多めになり他の費目が少なめになった。この差し引きにより、結果、次年度使用額が0円以外となった。次年度使用額を含め以下のように計画している。 第1に、日本を初めとする先進諸国で見られる物価のデフレ的傾向に着目し、グローバルな低価格競争と国内価格との連動性を分析する。その中で、経常収支不均衡における価格調整過程や物価安定に資する望ましい金融政策について考察する。第2に、世界各国の対外純資産の決定要因について分析する。対外純資産の動きは、投資収益収支に反映され、その国の国民総所得が国内総生産と乖離する現象として重要である。とくに、最近の経済環境の状況を含め、世界的なマイナスショックに対して、各国の回復状況を把握することを主眼とする。さらに、財政収支の悪化がその国の対外純資産蓄積にマイナスの影響を与える結果となることが予想され、これは、国家財政の運営を対外的な視点から評価する研究につながるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本、及び、世界各国の国際収支の動向、及び、対外資産・負債の状況について、実証分析の継続を行う。データ収集では、IMFのFinancial StatisticsやBalance of Payment Statisticsなどの有料データへの出費が見込まれる。その上で、専門の統計ソフトを使って行うが、目的の実証分析にふさわしい統計ソフトの入手(特に、分析時点での最新バージョンのソフト)や最新の専門書が必要になる。また、他の先行研究の調査のため、学会(日本経済学会、日本金融学会、あるいは、国際学会)や研究会への出席を計画しているので、旅費の出費が見込まれる。さらに、研究者を招いて研究報告を依頼する場合は、謝金・旅費が見込まれる。また、研究成果を、学会、研究会に発表しその為の旅費を必要とする。さらに、専門誌に投稿を計画しているのでその投稿料や校閲料などが必要になる。 もうひとつのテーマである、グローバルな低価格競争と国内価格との連動性について研究を進める。そのためのデータ入手が必要となる。関連研究の調査については、インフレーション・デフレーション、あるいは、金融政策に関する文献が中心となり、学術論文のほかに、中央銀行の報告書も調査の対象となるもの見込まれる。関連研究の調査として、日本経済学会、日本金融学会、あるいは、国際学会への出席を計画しており、これらは、旅費に該当する。さらに、研究者を招いて研究報告を依頼する場合は、謝金・旅費が見込まれる。一連の統計的処理については、統計ソフトを使って行うが、特に、時系列データにふさわしい統計ソフトの入手(特に、分析時点での最新バージョンのソフト)が必要になり、また、本研究に相応しい手法を得るために専門書の購入が見込まれる。
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