2011 Fiscal Year Research-status Report
移民受け入れによる経済社会の成長・持続可能性の研究
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23530358
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内藤 久裕 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00335390)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 移民 / 社会保障 / 高齢化 |
Research Abstract |
平成23年度は、移民受け入れの社会保障の持続可能性の理論分析およびシミュレーションを主におこなった。このシミュレーションでは、最終目標は日本経済であるが、移民に関するデータが豊富にあるアメリカ経済において、まず理論分析を行った。理論分析では、ある条件をみたせば、(1)移民受け入れは、経済にとってパレート改善になること、(2)この条件は、社会保障が行われている状況では、満たされること (3)このパレート改善は、移民受け入れとシンプルな租税システムで可能であること (4)さらに移民を受け入れることによって、経済の資本労働比率を上げ、経済を黄金律状態まで持って行けることをしめした。シミュレーション分析では、この理論結果をチェックするため、アメリカ経済をモデル化した、個人が最大100年生きる大規模重複世代モデルを作成した。このシミュレーションでは、理論的分析の定量化に成功し、アメリカ経済における現実的な移民増加(100年で10パーセントポイントの外国人比率の増加)では、そのパレート改善分の割引現在価値は、初期GDPの20パーセントにもおよぶことを示した。また経済の資本ストックを黄金律まで持っていくために、100年程度かかることもしめした。この結果を、国際的な権威のあるeconometric society meeting(US, St Louis)とEuropean economic association(Olso)で発表した。あと一カ月1以内に、権威ある学術誌に投稿の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
elegantな理論分析の結果がえられており、シミュレーションの定量的分析もこの理論的結果が,非常に経済的効果が大きいことをしめしている。権威ある学術誌に投稿できるquailityの論文が仕上がっている。あと一カ月以内に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、アメリカ経済に関してシミュレーション分析を行ってきたが、最大の目標は、高齢化少子化がいちじるしくすすむ日本経済において、移民受け入れがどのようなインパクトを与えるかを分析することである。今年度は日本経済モデルの完成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、研究費をシミュレーションの完成のために使用する。また移民の受け入れの経済厚生への分析では、移民受け入れよって資本移動がどのようになるかの分析が欠かせない。このためアメリカのデータを収集して分析を行う予定である。また移民受け入れによる自国民の人的資本蓄積がどのように変化するかを分析することも重要である。そのため、海外から研究者を招へいする。平成23年度にも研究者を招へいの予定であったが、震災・原発事故のため取りやめになった。これにより生じた次年度使用額を、平成24年度に招へいする海外研究者の旅費等にあてる予定である。
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