2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530360
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 正義 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70318666)
|
Keywords | 地域保険 / 国民健康保険 / 介護保険 / 地域間格差 / 地方財政 / 安定化 / 再分配 / 平衡化 |
Research Abstract |
市町村国民健康保険の市町村単位の特別会計データを用いて,国・県からの財政移転や保険制度間の財政移転,および市町村の一般会計からの繰入が,国保保険料(税)の市町村間分布にどのような影響をあたえているかについて明らかにした.この結果は Regional Equalization and Stabilization in the Japanese System of National Health Insurance, Public Policy Review 9(1), 33-50, 2013.として発表した. 前年度(平成23年度)に行った,安定化効果についても更なる考察を加えた.これについては,前年発表したDiscussion Paperに修正を加え2012年度日本応用経済学会春季大会(福岡大学)で学会発表を行った(題名: Channels of stabilization in a system of local public health insurance: the case of the National Health Insurance in Japan). 介護保険についても市町村単位の保険者データを用いて,被保険者のニーズにしたがって決定されるべき介護認定が市町村の財政状況によって影響をうけるか否かを明らかにした.これについては,2012 年度日本応用経済学会秋季大会(明海大学)にて,Compromise at the Margins: Needs Categories, Age Cohorts and Eligibility Assessments in the Japanese Long-term Care Insurance.と題した学会発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度では,平成23年度におこなった研究(地域保険者間の安定化という観点から,国民健康保険における保険者間の財政調整制度の機能を数量化し,財政調整制度の働きを評価する)の再考に時間がかかり,予定していた介護保険に関する同様の分析は十分におこなうことができなかった.しかし,いまひとつの予定であった,市町村の財政状況が地域保険の運営に与える影響の検証に関しては順調に分析を行うことができ,フルペーパーを作成し,学会で発表している. このように(フルペーパーを作成していないという意味で)介護保険をめぐる安定化と平衡化の数量分析は十分に行えていないため,年度初めに計画していた研究進捗からは若干遅れていると判断せざるを得ない.しかしながら,これら介護保険に関する分析手法は,既に作成した国民健康保険に関する論文の手法と類似しており,データについても既に収集整理は終わっている. 最終年度にあたる平成25年度においては,当初設定した当該年度の課題の遂行とともに,今年度までに十分行うことができなかった研究課題についても余裕をもって取り組んで行きたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成25年には,既述のとおり,計画通りに行われなかった課題と,応募段階で計画していた本来の研究課題の双方に取り組むことになる. 前者の前年度までに遂行できなかった課題は,(1)国民健康財政における安定化と平衡化効果の検証に関する論文完成(概ね完成しているため細かい点の詰め),(2) 介護保険財政における安定化と平衡化効果の検証に関する分析と論文作成,(3) 介護認定に財政状況が当たる効果に関する論文完成(概ね完成しているため細かい点の詰め)である. 後者は計画当初から予定していた保険料設定に関する分析である.当初は,介護保険と国民健康保険の双方の保険料設定について検証する予定であったが,前年度からの積み残しとなっている既述の課題を考えると,時間の関係上,介護保健の分析は割愛し,国民健康保険の分析に力点を置くことになるかもしれない.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度にあたる次年度は,当該年度の課題研究の遂行に加え,いままで蓄積してきた論文原稿も含め少なくとも4本の論文を完成することになる.これらは全て英語で作成するため,英語のチェックを行う必要がある.英語の校正料は,一本あたり少なくとも10万円強かかると思われ,全部で50万円程度をこれらの費用に充てる予定である. 次に,これら論文の一部は国際学会で発表することを予定している.現在平成25年度8月にシシリア島で開催される国際財政学会(International Institute of Public Finance)に応募中である.発表が認められれば海外渡航費が必要となる.また国内の複数の学会(応用経済学会,日本財政学会など)や大学セミナー等でも,研究成果を随時発表する予定である.これら内外の学会発表にかかる旅費として60万円を見込んでいる. そして残る約20万円は,図書費,ソフトウエア費,データ整理にかかるアルバイト代に利用する予定である.
|
Research Products
(8 results)