2011 Fiscal Year Research-status Report
経済主体の異質性が金融市場取引に与える影響に関する研究
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23530362
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西出 勝正 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (40410683)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Finacne / Financial Economics / Market Microstructure |
Research Abstract |
今年度は,理論モデルの構築を中心に研究を進めた.その結果,一般均衡分析の枠組みでの研究を1件,部分均衡分析の枠組みでの研究を1件,それぞれ査読付論文雑誌に刊行することができた.また,非対称情報を仮定した金融市場モデルについての研究が査読付論文雑誌に採択が決定した.その他,査読なしの調査レポートを2件刊行した.これも,本分野の既存研究・論文を調査する上で有用であった.新しい研究については2件の進捗が有った.第一に,債券価格にregime shiftが生じる研究に関するものであり,これは経済状況が悪化した場合の価格変化に対して経済学的示唆を与えるものである.第二に,同様の設定で投資実行の意思決定に関して考察した研究であり,こちらも経済状況が悪化した場合の投資状況に関する示唆を与えるものであると言える.以上の研究を進めるに当たって,国際会議2件,国内学会4件の研究発表(口頭報告)を行い,論文の質向上に努めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論研究については,査読付論文雑誌に3本(含む採択決定済み)の実績を上げることができた.経済主体の信念(主観確率)の異質性を一般均衡の枠組みで考察した論文は,資産価格のバブルや市場における富の配分に重要な理論的示唆を与える論文であり,当初予想された本研究の貢献そのものであると言える.また,採択が決定した非対称情報における金融市場を考察した論文では,市場流動性の日次パターンについて,マーケット・メーカーという流動性の供給主体の取引行動が主たる原因の一つであることを示した初めての論文であり,市場設計の有り方などに重要な含意を与える結果を示したと言える.また,新規論文(未採択)として2本を執筆した.こちらについては今後,国内外の学会報告などを通じて質を向上させていく.
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に計画した通り,今後は平成23年度で得られた理論モデルと実証研究を相互に検証して,双方の結果を整合的にまとめること念頭に進めていく.並行して,新しい理論的考察も積極的に行う.理論面に関しては,以下の通り研究を進めていく.平成23年で得られた結果は,経済主体の信念(主観確率)の異質性に主眼を置いた研究を中心に進めてきたが,それ以外の異質性が市場均衡に与える影響に関しても考察を加えていきたい.また,経済環境の変化が市場動向に与える影響についても同時に考えていく.実証面については,理論結果との整合性や相違点を念頭に置きながら市場制度のあり方やリスク管理手法についての示唆について考察していく.特に,昨今の世界的不況に対する処置といった面で何らかの含意を得ることも同時に考えていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
進行中の研究や新しい研究の発掘などには,国内外の学会に参加することが不可欠であり,自らの研究を報告するなどして,積極的に発信していきたい.また,当該分野は欧米で進んだ研究が行われているので,海外の研究者とも連絡を密に取って必要な場合は共同研究を実施していく.また,金融機関のリスク管理担当者や金融当局者を中心に,勉強会を開催してモデルの問題点や実用化に向けた課題を検討していく.その際,招聘者の講演謝金などにも重要する予定である.同時に,本研究にはデータを用いた数値計算やシミュレーションなどが必須であり,必要な計算機やソフトウェアを購入する計画である.
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Research Products
(10 results)