2011 Fiscal Year Research-status Report
企業金融に関連する法制度変化が資金調達行動に及ぼす影響に関する実証分析による検証
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23530364
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
廣瀬 純夫 信州大学, 経済学部, 准教授 (60377611)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 企業金融 / 企業統治 / 法と経済学 / 敵対的買収防衛策 / 企業再建 / エクイティ・ファイナンス / MSCB / メインバンク |
Research Abstract |
1. 買収防衛策導入の企業価値への影響広瀬・藤田・柳川(2007)の「2005年の防衛策導入のみが業績悪化のシグナルとして機能し,2006年以降はシグナルとしての役割を果たしていない」という主張の頑健性を確認するため,防衛策導入後の長期の企業価値変化および業績変化の検証を行った.その結果,業種・規模でコントロールしたROAは,導入後3年間の平均でみた場合,2005年導入企業では有意に低いが,2006年導入企業では有意な変化を確認できない.一方で,導入後の長期の株価パフォーマンスは,2005年,2006年ともに有意な変化を確認できない.つまり,2005年導入企業の株価への負の影響は,防衛策導入時点の短期のみ確認され,業績悪化が顕在化してくる過程では有意な株価変化を確認できない.このことから,2005年の防衛策導入のみ業績悪化のシグナルとして機能し,将来の業績悪化を予想して,導入時点で株価に負の影響が生じたと考えられる.2. メインバンクの特性が私的整理による企業再建の成功可能性に及ぼす影響私的整理による企業再建が再破綻する可能性に,メインバンク固有の特性が影響することを検証する研究の一環として,メインバンクの不良債権処理との関係について分析を進めた.不良債権開示基準は,1998年3月公表から,銀行側の判断で一定の貸倒引当金を引き当てた不良債権の残高を開示する形となった.分析結果では,この開示不良債権の残高が対自己資本額との比で大きい銀行がメインバンクである場合ほど,再破綻の可能性が低くなること.さらに,この不良債権の比が大きいメインバンクほど,私的整理の実施について合意に達した時点で株価に正の影響が生じていることを確認した.つまり,不良債権開示を通じて不良債権処理の取組への積極姿勢を開示することが,効率的な企業再建に取り組んでいるシグナルとして,市場に評価されたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.買収防衛策に関する研究:研究初年度の計画通り,日本における敵対的買収防衛策が初めて本格的に導入された2005年と,本格導入から一定期間を経た2006年,それぞれの時期の導入企業について,防衛策導入後の長期の企業価値の変化および業績変化について,検証を進めた.具体的には,防衛策導入後,3年,ないし5年の期間で,月次株価データを用いたイベント・スタディを行った.さらに,日経Needs Cgesのコーポレート・ガバナンス関係データを用いて,防衛策導入から3年後のトービンのQの変化およびROAの変化を,業種・規模をコントロールした上で確認し,研究成果の発表に至った.2.MSCB発行動機に関する研究:MSCBの発行動機の解明について,従来議論されてきた転換社債の発行動機を基に,分析を進めた.具体的には,資産代替によるモラル・ハザードの可能性を解消する動機と,逆選択の問題緩和という動機の2つが,代表的な転換社債の発行動機として挙げられ,その妥当性について,実証分析が積み重ねられてきた.そこで,研究初年度の計画通り,MSCBの発行についても,こうした動機があてはまるか否か,実証分析による検証を進めるため,必要となるデータ整理と,検証すべき仮説の検討を行ってきた.3.自社株買いに関する研究:研究初年度の計画通り,時価発行増資実施企業について,過去の自社株買い実施状況,配当支払いの状況を確認するためのデータ整理を行った.さらに,自社株買い実施後の長期的な株価変化や中長期の業績変化の検証を行うためのデータ整理を進めた.4.企業再建に関する研究:メインバンクにとって,不良債権残高開示を通じて不良債権処理の取組への積極姿勢を開示することが,効率的な企業再建に取り組んでいるシグナルとして,市場に評価されていた可能性について実証的検証を行い,研究成果の発表に至った.
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Strategy for Future Research Activity |
1.自社株買い等による株主への利益還元姿勢の差異が資金調達へ及ぼす影響配当支払いや自社株買いで株主への利益還元をせず,内部留保を過大に蓄積することが非効率な経営を助長する可能性について,ミクロ経済理論による理論分析を行い,実証分析モデルの構築を行う.その上で,1990年代の制度改革による自社株買い解禁以前と解禁以降を比較し,企業の設備投資動向,あるいは,設備投資が株価へ及ぼす影響の差異について検証する.2.MSCB発行の動機解明と企業金融上の役割についての理論的整理・実証分析による検証日経Needs Cgesのコーポレート・ガバナンス関係データを用いた実証分析により,MSCB発行動機の解明を進める.さらに,資本構成改善を意図した場合にMSCBが有用である可能性について,ミクロ経済理論による検討を行う.その上で, 投資家保護等の観点から,MSCB発行に関する適切な制度環境について検討を進める.3.買収防衛策としての新株予約権や第三者割当増資の活用が資金調達市場へ及ぼす影響第三者割当増資が,安定株主作りを目的とした買収防衛策の一環として活用されている可能性について,理論的整理を行う.そして,こうした必ずしも資金調達を意図しない株式発行や株式派生商品の発行が,純粋な資金調達目的の株式発行に,どのような影響を及ぼしているかについて分析し,今日の証券市場が抱える問題点の一つとして,今後の政策課題について検討を進める.また,近年,買収防衛策導入企業が,防衛策を解除する動きに着目し,防衛策の解除が企業価値に及ぼす影響や,防衛策を解除する経営者の動機について,分析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.株価関連データの購入および直接経費に次年度使用額が発生した主な理由:直接経費に次年度使用額が発生した主な理由は,下記の株価関連データについて,納期が平成24年度になったこと,それに伴い,データ整理をリサーチアシスタントに依頼することが平成24年度になったことである.このデータは,株価イベント・スタディを行う上で必須のものであり,具体的には,日経メディアマーケティングが提供する下記のデータセットとなる.【商品名】 (1)日本上場株式 日次リターン,(2)日本上場株式 月次リターン,(3)日本上場株式 久保田・竹原・Fama-French関連データ,(4)日本上場企業 日次財務:利用料金の合計 税込409千円2.コーポレート・ガバナンスに関するデータ:現在,日本企業では唯一のコーポレート・ガバナンス関連データとして,日経Needsによる企業統治度評価システム"NEEDS-Cges" 2012年度版の購入(単年度契約料420千円)が,本研究の実施にあたって不可欠である.3.旅費:学会,あるいは専門の研究会での研究報告,共同研究者との研究打合せ,その他資料収集等のための国内出張旅費として,300千円.4.物品の購入:企業金融関連の文献,法制度関連の文献,実証分析の手法に関する文献等の購入費用として,150千円.大容量ハードディスク等のコンピューター周辺機器の購入として,100千円5.謝金等:研究論文の英文校正の費用として,200千円.実証分析に用いるデータ整理のためのリサーチアシスタントへの謝金支払いとして,200千円.
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Research Products
(2 results)