2011 Fiscal Year Research-status Report
自治体間競争を通じて深化する地方分権社会の効率性と非効率性に関する理論・実証分析
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23530372
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
井田 知也 大分大学, 経済学部, 准教授 (50315313)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / スウェーデン / 地方分権 / 租税外部性 / 足による投票 |
Research Abstract |
一般的に、地方分権にはTieboutの足による投票仮説では「効率性を向上させる」、Zodrow and Mieszkowski=Wilsonの租税外部性仮説では「非効率性を促進する」と相反する評価がある。両仮説はこれまで各々の立場で別々に分析されてきたが、自らの研究成果を通じて双方の効果は各自治体内に併存するとの実感を得た。本研究の目的は、両仮説の要素を組入れた分権経済モデルに基づき、地方分権に伴い優位となるのは効率性と非効率性のどちらの方かを理論・実証の両面から分析し、我が国が地方分権を推進する上での検討課題を明示することである。計画した研究事業のうち平成23年度は、(1)基礎調査としてスウェーデンの地域構造分析、(2)理論分析として租税外部性仮説を中心に支配的な地方分権の効果に関する理論研究を実施した。まず、(1)は図書・資料などの文献調査を通じてスウェーデンの地域事情を把握する伴に、地方財政研究会で専門家との意見交換から様々な情報収集を行った。他方、(2)は水平レベル(地方政府vs地方政府)と垂直レベル(中央政府vs地方政府)ではどちらの自治体間競争の方が相対的に強い非効率性をもたらすのかを分析した。具体的には、Brulhart and Jametti(2006 JPubE)を発展させた経済モデルに基づき、支配的となる非効率性と地域数に関する命題を導出して、その実証分析も試験的に行った。その結果、地方政府の税率を非効率に引下げる水平的租税外部性の方が支配的となり、彼らとは正反対の帰結になった。このような新しい結果を得ることができたのは、我々が指摘した彼らの分析上の問題点を処理したことに起因すると考えられ、研究上の意義は大きいと思われる。平成24年度以降もこれに関する追加分析をさらに行い、その頑健性を高めるように努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画ではスウェーデンの地域事情を把握するために、共同研究者であるWilhelmssonスウェーデン王立工科大学教授の案内のもと、同国において関係機関への訪問を行い、統計資料や現地情報を入手すると伴に現地調査を行う予定であったが、勤務大学の業務の関係で実施できなかった。しかし、図書・資料などを通じた文献調査だけでなく、地方財政研究会での専門家との意見交換から情報収集を行うことでそれを補完することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は以下の研究活動を予定している。第1に、基礎調査としてスウェーデンを対象とした理論・実証分析の結果を我が国に反映させるため、共同研究者であるWilhelmsson教授を大分大学に招聘して日本での地域構造調査を行う。第2に、理論分析として足による投票仮説を中心に支配的な地方分権の効果に関する理論研究を行う。第3に、実証分析では理論分析から導出された命題に関する実証分析だけだなく前年の詳細な追加分析も実施する。第4に、広報活動の一環としてこれまで得た研究成果を国際学会(WEAI2012 米国)で発表すると同時に、そこでのコメントを基に改訂した論文を国際的学術雑誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な研究費の使用計画は次の通りである。まず、国内旅費を用いて学会・研究会に参加して専門家との意見交換を行い研究成果の改訂に努める。次に、外国旅費を用いて共同研究者であるWilhelmsson教授を大分大学に招聘すると同時に、これまで得た研究成果を国際学会(WEAI2012 米国)で報告する。さらに、上述の研究成果を謝金費を用いて英文校閲にかけて国外学術雑誌に投稿する。
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