2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530374
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
随 清遠 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (80244408)
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Keywords | 第一種過誤 / 不良債権処理 / 株式収益率 / 日銀預け金 / 先送り |
Research Abstract |
本研究は、不良債権処理に劇的成功を収めた「金融再生プログラム」実施後の処理プロセスと銀行経営のパフォーマンスとの関連を検証した。主な結論を整理すると、下記の通りである。まず2002年度後半以降の不良債権処理の強化にともなう不良債権額の減少は、銀行の株式収益率を高めた。しかし、同時に不良債権処理損が株式収益率やトービンのqを引き下げる効果があった。また償却債権取立益や貸倒引当金戻入益の発生は、トービンのqの低下をもたらした。さらに、日銀預かり金比率を金融仲介の代理指標で判断する場合、不良債権処理損失比率は金融仲介力の低下をもたらした。そういう意味で「金融再生プログラム」によって強化された不良債権処理は、銀行の仲介能力を低下させた側面をもっている。 本研究において必ずしも検討が十分でない問題をここで述べておこう。まず、推計モデルの変数設定である。推計モデルの被説明変数と説明変数が多くの先行研究にも採用されたとはいえ、その取捨についてやや恣意的である批判が免れない。また、実体経済の影響はいずれも理論的予測に反している。パネルの推計で固定効果が地域経済の影響を吸収したことが原因と思われるが、今後実体経済の影響をどのように特定するかは課題として残る。さらに、2002年度までの不良債権増加理由について一つの仮説を提示したが、それに関する実証的検討は行っていない。いずれも今後の研究課題としてより丁寧な議論が望まれる。 。
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