2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530380
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
白須 洋子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80508218)
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Keywords | M&A / 銀行 / 保険会社 / アジアの金融システム / 金融規制 |
Research Abstract |
まず,平成24年度は国内金融機関の分析を完了し,国内外の学会で2回発表した. 国内の保険業,銀行業及び証券業の分析の結果,保険業ではアナウンス前には基本的な業務体質改善期待の傾向が見られるが,他方,不良債権処理が終わり比較的健全な経営が行われている銀行では次なるステップへの期待傾向が見られること,証券業では業務の多様化等が進んでいないことへの警告が見られるなど,資本市場の評価には業態により違いがあることが判った. さらに,分析対象をアジア地域の金融機関(銀行及び保険会社)にまで広げ,その第一次の分析が完了し,英語論文の一次ドラフトを書き上げた段階である.国内セミナーで1回,海外の学会で1回,発表し有意義なコメントを得ることができた. アジア地域銀行の一次分析結果によると,(1)The cross-borderの多角化戦略は企業価値の創造につながっているが,しかし投資家はindustry多角化には関心がないこと,(2)投資家は,ローン比率が低い銀行が比率の高い銀行のローンを相互補完的な提携戦略を評価していること,(3)cross-border効果は国家の特徴(国の格付け,経済の自由度及び法体制)に影響を受けること,(4)提携のacquirerの場合,金融規制の緩和が銀行のパフォーマンス向上に有効な場合があり,銀行活動の制約を緩めたり,外銀の参入障壁を緩めたり,銀行のセルフ・モニタリングを促進することは,銀行のcross-border事例において企業価値を高めること,が実証的に判った. なお,24年度の発表実績を評価され,海外学会のボードメンバ-・プログラム委員に選出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の目的は,国内の保険業・銀行業及び証券業の分析を完成・公表し,オールアジアの金融機関の多角化戦略の分析が一定程度終了していることである. まず,日本国内金融機関の分析については,英語論文の文言等の最終確認をしているところであり,近日中に学術雑誌への投稿する予定である.一方,日本語版(対象を銀行と保険会社に絞り,一部内容を変える)については,共同で日本語図書の形で出版する話がある.しかし,図書出版に関する資金面の手当や他の研究者との打ち合わせ等に予想以上の時間を費やしており,そのために学術誌への投稿時期等も調整している.公表の時期が全般的にやや遅れている. 次にアジアの金融機関の分析については,平成25年3月中旬に実施された国外学会で要因分析の部分について重要且つ細かな指摘を受けた.非常に有益なコメントであり,よりよい論文にしていくには,一部の分析データ取得し直し・再分析等のその部分の大幅な修正を行う必要である.平成25年度もいくつかの国内外での学会発表が予定されているが,それらの発表に間に合うよう修正していくつもりである.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,日本国内の金融機関に関する分析については,英語の文言の最終確認作業を早急に終わらせ,近日中に米国の保険関係の学術雑誌へ投稿を行う予定である.また,日本語図書出版については,共同で資金面の手当や他の研究者との打ち合わせ等の準備を,関係者と調整しながら進めていく予定である. 次にアジアの金融機関の分析については,平成25年3月の学会で指摘された事項について,一部の分析データ取得し直し・再分析等を含め大幅な修正を行っている.平成25年度は,年度当初時点ににおいて国内で2学会,海外で5学会の発表が予定(発表の採択承諾を受けている)されている.これらの発表に間に合うよう順次修正していくつもりである. なお,発表の採択承諾を受けたある海外学会では,当該論文を6項目について点数評価してくれ,テーマ性について高い評価,実証のロバスト性について厳しい評価とともに問題定義をしてくれた.一次原稿の段階で具体的な数値評価及び問題定義を知る機会を得れたことは非常に有益であり,それらのことに真摯に向き合い,再度,一部の分析データ取得し直し・再分析等のその部分の大幅な修正を行うつもりである. さらに,分析対象をアジアのみではなく欧米等にも広げ,アジアと欧米との結果の比較が必要だとも考えている.国家の特徴の違いが銀行の多角化戦略に与える影響をよりグローバルに分析していきたい. これらの修正及び分析は,遅くとも夏から秋にかけて完成させるつもりである.その後,可能であれば,年度末には修正後の論文を海外学会で発表したい.発表できるよう,コンファレンスの採択承諾がもらえるよう丁寧に修正していきたい. 海外学会発表後は銀行関係の学術雑誌への投稿を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な研究費の使用用途は,論文の修正及び対象国拡大のためのデータ取得費用,海外の国際学会への旅費及び参加費,英文校正費用を予定している. データ取得費用は,M&A・株価・マーケット情報・マクロ経済情報及び企業の財務情報に関するデータベースの利用費用に充てる.24年度に契約したデータベースをカスタマイズ化・継続利用することにより効率的且つ安価で利用できるようにするつもりである. 旅費は,海外の国際学会への参加費用(学会参加のための事前査読費,航空機代,宿泊費,日当,学会参会費等)に充てる予定である.米国で開催される学会のみではなく,むしろ金融システムが銀行orientedeとなっているヨーロッパ地区で開催される学会での発表を希望している. 人件費は,主にデータ整理等のアルバイト経費を予定している.一部には専門的なデータも含まれており単純な作業のみではないので,一定の専門的な知識のある方にお願いする予定である. その他は,英語論文の英文校正費,消耗品等である.
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