2012 Fiscal Year Research-status Report
欧州連合における集権分権と状態依存ガバナンスのゲーム理論的分析およびその拡張
Project/Area Number |
23530383
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
鈴木 豊 法政大学, 経済学部, 教授 (20277693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貫 芳祐 法政大学, 経済学部, 教授 (70207447)
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Keywords | ガバナンス / ゲーム理論 / 契約理論 / 公共経済学 / 政治経済学 |
Research Abstract |
本研究は、EU(欧州連合)の安定成長協定(SGP)を通じたユーロ圏財政ガバナンスのメカニズムを、金融集権・財政分権の構造の下でのインセンティブ問題に焦点を当てながら、ゲーム理論的に分析した。まず基本モデル(ユーロ加盟n国の財務省を先手とし、欧州中銀(ECB)を後手とするシュタッケルベルクゲーム)において、金融集権・財政分権の共通通貨同盟の下では、国債発行に関するフリーライダー問題が発生し、かつ加盟国数が多くなるほど厳しくなることを確認した。次に、安定成長協定(SGP)下では、逸脱国に対する制裁スキームを事後的に再交渉しないことにコミットできないため、事後的再交渉が均衡で発生し、そのレジームの次善の解として、国債発行費用が高くなるほど、当該国の財政主権制限(財政予算制約)を厳しく課すことが最適となることを導出した。さらに、「平時における金融集権・財政分権の構造と、非常時における状態依存型のコントロール権の移動」という「状態依存型ガバナンス」の仕組みが内生的に導出されることを確認し、「相対主権論」に基づくEUガバナンスを理論的に基礎づけした。最後に、財政同盟下では、財政分権の下でのフリーライダー問題が内部化されるため、効率性は増大するが、財政統合により、各国の財政主権の喪失による政治的便益の損失が大きければ、財政統合は不可能となることも確認した。今年度は、Fiscal Devaluationなど、最近の理論研究との関わりなどを中心に文献補強を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、上記の研究成果の一つを、法政大学比較経済研究所 ICES Working Paper No.170として次のようにまとめた。 Yutaka Suzuki, "Centralization, Decentralization and Incentive Problems in Eurozone Financial Governance: A Contract Theory Analysis", 35pages また、広い意味で関連のある研究を、国際学会(計3回)や国内外のワークショップ(計3回)で報告し、鋭意研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「ユーロ圏ガバナンス」の問題への現実説明力のある理論分析であり、また、EUにおける状態依存型ガバナンスを理論的に導出しただけでなく、それが国際政治学の視点から見ても、説得力のある斬新な概念だという点で学際的意義もある。さらに、安定成長協定(SGP)の仕組みのアイデアは、最近のG20とIMFによるグローバル・ガバナンスの制度設計において、大きく参考になっていることからも、まさに今日的で緊要性のある研究である。この緊要性のある研究テーマに対して貢献する成果を出せるよう鋭意努力して行く。まずは、現在の学術論文が、査読付き国際雑誌へ最終受理されるよう努力していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)