2013 Fiscal Year Annual Research Report
欧州連合における集権分権と状態依存ガバナンスのゲーム理論的分析およびその拡張
Project/Area Number |
23530383
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
鈴木 豊 法政大学, 経済学部, 教授 (20277693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貫 芳祐 法政大学, 経済学部, 教授 (70207447)
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Keywords | ガバナンス / ゲーム理論 / 契約理論 / 公共経済学 / 政治経済学 / ユーロ圏 |
Research Abstract |
本研究では、ユーロ圏財政ガバナンスのメカニズムを、金融集権・財政分権の構造の下でのインセンティブ問題に焦点を当てながら、ゲーム理論的に分析した。まず基本モデル(ユーロ加盟n国の財務省を先手とし、欧州中銀(ECB)を後手とするシュタッケルベルクゲーム)において、金融集権・財政分権の共通通貨同盟の下では、国債発行に関するフリーライダー問題が発生し、かつ加盟国数が多くなるほど厳しくなることを確認した。次に、安定成長協定(SGP)下では、逸脱国に対する制裁スキームを事後的に再交渉しないことにコミットできないため、事後的再交渉が均衡で発生し、そのレジームの次善の解として、国債発行費用が高くなるほど、当該国の財政主権制限(財政予算制約)を厳しく課すことが最適となることを導出した。さらに、「平時における金融集権・財政分権の構造と、非常時における状態依存型のコントロール権の移動」という「状態依存型ガバナンス」の仕組みが内生的に導出されることを確認し、「相対主権」に基づくEUガバナンスを理論的に基礎づけした。最後に、「財政同盟」下では、フリーライダー問題が内部化されるため効率性は増大するが、財政統合により各国財政主権の喪失による政治的便益の損失が大きければ、財政統合は不可能となることを確認した。貫(2014)は、2011年12月のEU首脳会議で採択された「新財政協定」を、ドイツ=フランス間での財政ルール制定における「連邦主義」(ドイツ)と「国家間主義」(フランス)の衝突と取引の結果だと捉え、ナッシュ交渉理論の枠組みを用いて、両国はほぼ対等な結果を得たという政治学的な分析結果を得た。 また貫(2014)は、ユーロ圏財政ガバナンスでは、必要な財政金融制度の構築も、ミニマムな主権委譲でしか行われず、制度の破たん後、委譲を積み増して対応してきたことを、「参入阻止理論」の枠組みを援用して分析した。
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Research Products
(8 results)