2012 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会の所得課税における効率性と公平性の調和
Project/Area Number |
23530386
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
望月 正光 関東学院大学, 経済学部, 教授 (40190962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗林 隆 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30306401)
野村 容康 獨協大学, 経済学部, 教授 (90383207)
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Keywords | 二元的所得税 / 超過利潤税 / キャッシュフロー法人税 / ACE法人税 / 付加価値税 |
Research Abstract |
本研究の目的は、貯蓄‐投資課税の効率性を維持しつつ、所得課税の財源調達機能と再分配機能による公平性を実現可能とする二元的所得課税の新たな展開について検討を行うことである。新たな二元的所得課税とは、個人段階の累進的勤労所得課税とフラットな税率の資本所得課税に、法人段階での超過利潤型の法人税(キャッシュフロー法人税、ACE法人税など)を組み合わせたものである。グローバル化の下で、今後国際競争力を維持しつつ、成長を図る点からも課税戦略として必須の税制の研究を進めている。 平成24年度は、法人段階での超過利潤税(とりわけ、ACE法人税)の新たな展開について、理論的側面と実証的側面から研究を進めた。また、あわせて、二元的所得課税と代替財源としての付加価値税(消費税)の研究も行った。 1.実施予定の超過利潤税導入国(ベルギー)への現地調査を8月20日~23日にかけて行った。現地会計事務所および現地企業からの実務家との意見交換は、新しい知見としてとても有効であった。それに先立って8月15日~19日に開催されたドイツ・ドレスデンでの国際財政学会(IIPF)では、最新の研究を進めている租税研究者と意見交換とディスカッションを行なった。 2.グローバル化の下で、国際競争力を維持しつつ、成長を図る超過利潤税について研究を進めた。その成果の一部を研究協力者である山田直夫(日本証券経済研究所)と井上智弘(電力中央研究所)が平成24年度の日本財政学会大会で報告を行った。 3.また、法人段階での超過利潤税の導入は、必然的に税収の減少をもたらすことから、代替財源の研究が必要となる。そこで、税収を確保するために付加価値税のあり方についても検討を加えることとした。平成24年度において、グローバル化の進む経済の下で、付加価値税のあり方が問題となっていることから、効率性と公平性の観点から調査研究に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた二元的所得課税の新たな進展について、理論的側面と実証的側面からほぼ検証作業を進めることができた。また、ベルギー等のEU諸国の税制改革の新潮流について、現地調査を実施することができた。さらに、ドイツ・ドレスデン工科大学で開催された国際財政学会に参加し、各国の研究動向について知見を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
EU諸国における所得税と法人税との一体的な税制改革への流れに関する調査研究を引き続き進める。同時に、平成24年度に行った法人段階での超過利潤税導入国(ベルギー)への現地調査を踏まえて、超過利潤税を制度化する際に直面する問題の検討や税制改革後の実態についての研究をさらに進展させることにする。 また、所得課税における新しい潮流である二元的所得税が、すでに実施されている北欧諸国を例にして具体的な実施上の問題点についても分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度に実施した超過利潤税導入国(ベルギー)への現地調査の成果を活かしつつ、超過利潤税の経済効果について実証分析を行う。また、超過利潤税の制度化に当たって直面する問題点の検討や税制改革の影響について分析する。また、二元的所得税の理論的および実証研究をさらに進化させる。同時に、代替財源として重要性を増している付加価値税についても研究を進める。 そこで、平成25年度は、設備備品費として、理論・実証研究に必要な文献取得を継続するともに、主として超過利潤税の実証分析に不可欠な財務データ取得に使用を予定している。また、旅費として、学会等でこれまでの研究成果を発表するためや、研究調査のための出張を予定している。
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Research Products
(6 results)