2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530389
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
八塩 裕之 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (30460661)
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Keywords | 個人住民税 / 地方財政 / 課税ベース / 応益性 / 高齢化 |
Research Abstract |
今回の研究は二点の研究テーマを挙げているが、平成24年度はその二点目のテーマである「税と社会保障が国と地方の財政関係に与える影響」に関しておもに作業が進行した。2点のうち、1点は論文公刊、1点は学会報告であり、その成果を以下で簡潔に説明する。 1点は、個人住民税の課税ベース浸食の実態を示す論文を『日本経済研究』に公刊した。この論文では、個人住民税の課税ベース浸食が家計の税負担に与える影響、および地方財政に与える影響をデータで分析した。また、個人住民税の課税ベース拡大が、家計の税負担・地方財政に及ぼす影響をシミュレーションで示した。住民税は地方の基幹税であり、地方財政への影響も大きいにもかかわらず、その実態は必ずしも明らかにされていない。本稿では、その課税ベース浸食が、住民税における応益性の阻害や地方財政における財政格差の点で大きな問題を与えていることを具体的に示した。 2点目の実績は、これも個人住民税であるが、高齢化が個人住民税の課税ベースの浸食を進行させる実態を計量手法で分析し、「日本財政学会」で報告を行った。高齢化が進み、勤労をする人の引退が増えると、税制改革などなにもしなくても、住民税の課税ベース浸食が加速してしまい、地方財政に大きな影響を与える可能性がある。そうした実態はあまり明らかにされてこなかったが、計量手法を用いて、それによる税収ロスや地方自治体間の財政格差への影響などを中心に、計量分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は論文を一本公刊でき、また学会での報告も実施できた。学会で報告した論文は論文の公刊に向けて作業を行っている。また、今回の研究テーマのもう一つである「税と社会保障制度が近年の格差問題に与える影響」についても、論文執筆を開始しており、研究会での報告などを平成25年度に予定している。以上を踏まえ、研究はおおむね予定通りに進んでいると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
二点の研究テーマを順番に述べると、まず「税と社会保障が国と地方の財政関係に与える影響」については、昨年度に学会報告した論文の公刊を目指す。論文の改訂を行ったうえで、雑誌への投稿・掲載などに向けて作業を行う。 もう一点の研究テーマである「税と社会保障制度が近年の格差問題に与える影響」については、現在、論文を執筆中である。完了次第、研究会や学会での報告、雑誌への投稿などを順次行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は直接経費500000円に、平成24年度までの残額43220円をあわせた543220円の支出を予定している。平成24年度に残額が発生した理由は、年度末に予定していた東京などへの出張が平成25年度に延期となったからである。 次年度の支出の予定は、平成25年度に延期となった出張を加え、今のところ当初計画通りを考えている。研究で必要な知見(とくに研究が進んでいるアメリカ)を得るための出張に必要な旅費が35~40万円(残額43220円を含む)、その他書籍や物品購入などで14万~19万円を予定している。研究の進行によって、変化も生じうるが、今のところ当初の予定通りに支出を行う予定である。
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