2013 Fiscal Year Annual Research Report
「平成の大合併」における政策決定者の機会主義的行動の影響
Project/Area Number |
23530390
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川浦 昭彦 同志社大学, 政策学部, 教授 (10271610)
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Keywords | 公共選択 / 市町村合併 / 多選 / 首長 |
Research Abstract |
この研究計画の枠組みは、地方自治体を対象とした「公共選択」である。その目的は、日本において行われた市町村合併をめぐる意思決定過程において、地方政治家の私的利益追求行動が与えた影響を明らかにすることである。そのための理論的枠組みとして、多選首長の行動に関する理論モデルを構築し、(1)首長の選出回数と地方自治体の支出に関する仮説、および(2)市町村合併に際しての首長の行動仮説、を導出した。 全国すべての市町村データにより計量経済学的手法を用いてこの2つの仮説を検証した結果、(1)首長が多選になるほど市町村の支出が増加すること、(2)首長が多選になるほど相対的に小規模の自治体との合併を行うこと、が明らかになった。仮説はデータと整合的である。 一方、合併を促進するための法律では、市町村間の合併調整を行う役割が都道府県知事に規定されていた。しかしながら、一部の知事が市町村合併に反対の姿勢を表明するなど、知事の指導力が全都道府県で一律に発揮されたとは考えがたい。そこで、研究期間最終年度には、知事の属性に関する情報を収集して、市町村の合併意思決定に知事の私的利益追求行動が影響を及ぼしたか否かを検証した。様々な分析手法を試みたが、知事の属性は合併の成否の決定要因とは確認されなかった。 本研究の成果の意義は2つある。第1に、市町村合併に関して日本で行われている学術的研究に、公共選択の視点からの新しい知見をもたらすことができたことである。第2の意義としては、地方政治家の私的利益追求行動が自治体政策に影響を与えていることが明らかになったため、住民の一般的利益と政治家の私的利益の整合性を担保するための政策決定の仕組みの重要性が明確になったことである。
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