2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530391
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
太田 浩司 関西大学, 商学部, 教授 (70366839)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 江美 帝塚山大学, 経営学部, 講師 (50581485)
|
Keywords | 証券アナリスト / 利害相反 |
Research Abstract |
本研究の目的は,証券アナリストの独立性についての知見を得ることである.証券アナリストは,資金の需要サイドである企業と供給サイドである資本市場とを結ぶ情報仲介者であり,彼らの職務の大きなひとつに,アナリスト・レポートと呼ばれる企業調査レポートを執筆・公表することがある. アナリスト・レポートは,投資家にとって大切な投資意思決定情報であるので,当然のことながら,その執筆者である証券アナリストには調査対象企業からの独立性が求められている.ところが,実際には様々な利害相反が存在して,アナリストの独立性が毀損されていることが予想される.そこで本申請研究では,わが国の証券アナリストの独立性が果たして本当に担保されているかどうかを,実証的アプローチで検証することを主目的としている. 本年度は,収集したアナリスト・レポートから得られた情報に基づいて,幾つかの分析を行った.具体的には,アナリスト・レポートに含まれている,株式レーティングやアナリストの利益予想情報に対して,市場がどのような反応をしているかについて調査を行っている.イベント・スタディと呼ばれる手法を用いて,アナリスト・レポートに含まれている情報に対する市場の反応を検証したところ,市場は,株式レーティングとアナリスト予想利益情報の両方に反応しており,また,経営者自らが開示する経営者利益予想情報を所与としても,さらに追加的な情報内容を有していた.このことは,アナリストは,単に公開情報を要約して市場に伝達しているのではなく,自らそれらの情報に基づいて詳細な分析を行うことによって追加的な付加価値を付与しているということを示唆するものといえる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の調査対象であるアナリスト・レポートが,紙ベースでしか入手できなかったので,それらを数値に変換してデータベース化するのに幾分手間取ったが,概ね予想通りに研究は進捗しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大の難所ともいえる,アナリスト・レポートのデータベース化は終了したので,今後はこのデータベースを用いて,アナリストの独立性に関する各種の検証を行う予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越金が31万円ほど残っているが,これは主として学会での研究成果発表が遅れたために,旅費が残ってしまったためである. また次年度は,それほど予算が残っているわけではないが,企業の公募増資に関する情報を得る必要があるので,東京証券取引所が運営するTDNETを使用することを考えており,そのための費用として,40万円ほど使用する予定である. 残りは,これまでの研究成果を日本ファイナンス学会等で発表するための国内旅費に充当する予定である.
|