2012 Fiscal Year Research-status Report
日本における個人投資家の意思決定バイアスに関する実証研究
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23530393
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
神津 多可思 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 研究員 (40598942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 浩一 法政大学, 経済学部, 教授 (40328919)
竹村 敏彦 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 助教 (00411504)
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Keywords | 個人投資家 / 意思決定バイアス / 金融リテラシー / 投資リテラシー / 金融知識 / インターネット調査 / 金融政策 / 制度設計 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の個人投資家の投資行動について定性的かつ定量的な分析を行い、個人投資家に意思決定バイアスが存在するかどうかを明らかにするとともに、個人投資家の行動モデルの構築並びに有効となる意思決定の特性を考慮した金融規制の設計や金融政策を提示することである。 研究代表者である神津は、関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構(以下、RISS)の経済心理学データアーカイブの「金融行動調査IV(個人投資家の意識等に関する調査)」の調査データを用いて、個人投資家の将来の物価変動率予想と投資パターンの関係に着目した分析結果から、個人投資家の多くはこれまでのデフレ傾向にもかかわらず、1%前後のインフレを予想していることを明らかにした。また、研究分担者である竹村は、個人投資家の預金行動を分析した結果から、預金額などの経済変数に加えて、メディアに対する信頼度や接触頻度も預金行動に影響を与えていることを明らかにした。これらは、RISSディスカッションペーパーとして刊行された。研究分担者である武田は、金融リテラシーと意思決定バイアス(特に、自信過剰度)の関係を分析し、個人投資家の投資リテラシーが高いことが、彼らが意思決定バイアスに左右されて効率的な投資を行なえなくなる可能性を低下させる効果を持つことを明らかにした。そして、この分析結果はソシオネットワーク戦略研究事業10周年記念国際シンポジウムで報告された。 これらの分析結果を踏まえて、個人投資家の客観的な金融や投資リテラシーを測定するためのクイズ等の質問項目を含んだ調査票を設計し、インターネット調査を実施した。この調査結果から、インターネット調査における最適な調査設計の問題に関していくつか興味深いこと(例えば、主観的な金融知識に関して、クイズの前後で同じ質問を行ったところ、クイズの前後で若干ブレが生じることなど)がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究課題では平成23年度と平成24年度に調査を実施する予定であったが、既存の調査の個票データを用いた分析の結果から、調査票の綿密な議論を行う必要がわかり、調査時期を1年ずつ先送りにした。そのため、当初、平成25年度は平成23年度と平成24年度の調査結果を用いた分析を行うと計画していたが、平成25年度も調査を行い、それと同時に、平成24年度に収集した調査データとともに分析を行う。 綿密な議論を通じて調査票を作成した結果、日本の個人投資家の行動モデリングにおいて必要なデータを得ることを可能にしたと考えられ、このことが国際比較を可能とする意思決定モデルの構築に寄与したと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度の調査で用いた調査票の更なる改定を行い、調査を実施するとともに、これまで同様、個人投資家の属性と投資パターン、および個人投資家の金融リテラシーと投資リテラシー、金融知識などの関係などについて統計分析を行い、分析結果とその結果が持つ含意を金融政策に役立てるために、論文としてまとめ、研究会や学会等で発表を行い、情報発信を行う。 さらに、収集・蓄積してき調査データを、個人が特定化されないように加工し、データ公開を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先送りになった平成24年度に確保していた調査費用を用いて、個人投資家の行動についての調査を平成25年度に実施する。実施時期に関しては、本年度に実施した調査との比較検討を考慮した時期に行う予定である。また、平成24年度に執筆した論文を更なる精査を行い、査読誌への投稿および学会発表を行う。
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Research Products
(3 results)