2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530404
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粕谷 誠 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40211841)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 債券市場 / 戦間期 / 証券会社 / 資金調達 |
Research Abstract |
発行社債の発行時のデータは日本興業銀行『社債一覧』に収録されているので,発行された事業債についての入力を1926年発行分から進めた。始期を1926年とするのは,1920年代の半ばから事業債の発行が増加するためである。1930年分まで入力を進めつつある。入力の終期は1935年とする予定であるが,戦時の金融統制の影響を排除するためである。 このほか社債の流通に関するデータを入手するため,東京株式取引所『東京株式取引所月表』および『東京株式取引所短期清算取引及実物取引売買表』から得られる価格データの入力を試験的におこなって,その実現可能性をチェックした。 本年度は社債の発行の引受や流通を担った証券会社の経営分析をおこなった。具体的には,日本最大の証券会社の一つであった山一証券の経営を分析した。その結果,山一証券は,第一次世界大戦前から債券の募集などを進めていたが,戦間期になると株式市場が不振となり,株式関係の業務が減少する一方で,社債の発行市場が発展するという情勢を捉えて,債券の募集事務から進んで,債券の発行引受へと業務を発展させていった。これは発行のリスクを負うものであり,危険なビジネスであり,1928年には手持ち債券が増加して,救済を受ける事態に立ち至った。こうした状況を受けて,1930年代の社債発行ブーム期には,都市銀行が社債引受シンジケートを組織して社債を引受け,証券会社が共同してそれを下引き受けするという体制に変化したことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究はデータを入力して,それを分析することとしているので,データの入手がなによりも重要である。そのうち最も基本的なデータとなるのが『社債一覧』であるが,これについてはデータの入力を開始し,半分近くのところまで入力が終了している。このほか一橋大学などに所蔵されている『東京株式取引所短期清算取引及実物取引売買表』などのデータを一部収集しつつあり,売買価格のデータ収集もほぼ順調に進んでいるといえる。さらに証券会社の経営についての分析もおこなっている。以上の点から,研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も引き続き,データの構築をおこなっていく。『社債一覧』については,24年度中にデータの入力をほとんど終える予定である。また東京株式取引所短期清算取引及実物取引売買表』などの売買データの収集に努め,これを体系的に整理する方法について検討していく予定である。平成24年度中にデータの入力についてほぼめどをたて,さらに利回りの計算に進んでいく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データの入力をおこなうためにアルバイトを雇用する。雇用についてはすでにめどがついている。またデータの収集および関連情報を収集するために学会に参加するので,それに関する旅費を支出する。とくにEuropean Business History Associationの年次大会が2012年8月末から9月初頭に開催されるが,そこで研究報告をおこなうために,旅費を支出する。また債券分析に関わり,その証券化について,11月に開催される経営史学会の年次大会でも報告する予定である。必要な書籍などの物件も購入する予定である。
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