2013 Fiscal Year Annual Research Report
失業対策としての公的雇用政策の原理と実態ーー戦間期の日欧各国比較
Project/Area Number |
23530405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加瀬 和俊 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20092588)
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Keywords | 職業紹介所 / 失業者 / 失業救済事業 / 失業登録 / 公共土木事業 / 公的雇用政策 |
Research Abstract |
日本の失業対策事業についてはすでに刊行した『戦前日本の失業対策』(1998年)、『失業と救済の近代史』(2011年)においては不足していた工事現場の具体的な事例について資料調査を継続し、職業紹介所職員、労働統制員、工事担当部局職員などの対応、表面化した労働争議の意義などについて分析を加えた。また、失業者が従事していた失業救済事業以外の雇用機会に視野を広げ、失業者が廃品回収業などの簡易自営業を含めて救済事業以外の就業機会に多様に従事していた実態について確認した。比較事例としての戦後の失業対策事業についても資料収集を続け、状況が戦前と類似していた復興期から、高度成長期以降に事業の性格が大きく変化したことを確認し、その背景について検討した。 外国の事例については、国際労働機関(ILO)による各国の失業者救済の公的雇用政策についての報告書に示されている認識の特徴について確認した。各国事情については、アメリカのニューディール政策期における各種の公的雇用に関わる著作類、統計資料類を活用して、事業の種類、管理手法、失業者の認定・雇用方針、省庁間や連邦政府・地方政府の権限・責任の相互関係とその変化などについて検討を加えた。また好況であった1920年代においてもいくつかの州では実施されていた救済型の公的雇用と30年代のそれとが、連邦政府の積極的関与によって受益者にとってどのように異なるものであったのかについて対比した。さらにフランスについては、公文書館の文書資料にもとづいて公共事業実施の際の求人・求職者事情等について検討を加えた。比較対象としての欧州各国の今日の公的雇用事業については、二次文献およびweb情報の範囲にとどまってしまったが、官公庁による失業者の直接雇用の制度が日本よりも相当に充実していること、その背景には戦前・戦後の公的雇用政策についての肯定的評価があることを確認した。
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