2013 Fiscal Year Research-status Report
鉄道車輌貿易の国際関係史的研究―日本鉄道業発展の国際的契機―
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23530406
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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Keywords | 鉄道用品貿易 / 日本鉄道業 / 機関車メーカー / 商社 / 代理店契約 / Baldwin社 / 三井物産 / 大倉組 |
Research Abstract |
本研究は、近代日本における経済発展の国際的契機を、鉄道用品貿易という事例を通して考えることを課題としている。この課題に接近するため、本研究では国内外における鉄道資材メーカーの企業文書や外交文書、貿易統計などを渉猟し、2013年度までに必要な資料やデータの多くを収集することが出来た。とくに2013年度には、テキサス州ダラスの南メソジスト大学図書館で、19-20世紀転換期におけるアメリカ最大の機関車メーカーであるBaldwin Locomotive Worksの関係資料を調査し、同社のSpecification booksやextra order books、対日マーケティング担当者の手帳、代理店(Frazer商会)向けカタログなどを収集した。同様に、アメリカ国立公文書館(ワシントンDC)では、日本企業接収文書(RG131シリーズ)に含まれる大倉組関係文書の調査を行い、当該期における鉄道用品取引の実態が判明するNew York支店、London支店、東京本店の往復書簡を収集した。さらに、もう一つの大機関車メーカーであるAmerican Locomotive Companyと三井物産との関係についても、三井文庫が所蔵する三井物産側資料の収集に努め、対極東輸出の数量や代理店契約の内容などについて研究を深めた。 これらの調査によって、アメリカ製機関車の対日輸出が、単に量的な側面からだけでなく、代理店との取引関係、現地でのマーケティング活動の実態という、質的な側面からもとらえられるようになった。その結果、①アメリカ機関車メーカーが世紀転換期に、日本に技術知識を有する従業員を送り込み、現地の代理店と協力しながら市場を開拓していった、②鉄道国有化後には日本の国内市場が急速に縮小し、マーケティングの舞台が、朝鮮、中国、台湾といった極東地域に急速に拡がっていくといった点が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画はアメリカでの機関車メーカー、日本商社関係資料の調査を重点的に実施し、日米双方の史料を用いて、世紀転換における鉄道車輌対日輸出のメカニズムを考えることにあった。この当初目的は、三井文庫やアメリカでの現地調査によってほぼ達成できた。とくにテキサス州ダラスでのBaldwin社関係資料の調査によって、予定されていたアメリカでの資料調査がほぼ完了し、期待された以上の資料を収集することができた。 さらに3月21日に行った横浜近代史研究会での研究報告「世紀転換期における鉄道用品取引と内外商社」によって、アメリカ製機関車の対極東輸出についての成果取りまとめの目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である2014年度は、これまでに実施した調査・研究をふまえ、(仮)『海をわたる機関車: 日本鉄道業形成の国際的契機』というタイトルの成果報告書の取りまとめをめざす。 そのためまず、イギリスでの収集資料の精査を行い、イギリス製機関車の対極東輸出に関する研究成果の取りまとめをおこなう(研究補助謝金が必要)。次いでドイツ製機関車の動向を検討する。ドイツについては、残された予算との関係で長期間の現地調査が困難なため、国内で入手できる資料や文献を可能な限り収集するとともに、専門家のご教示を仰ぐことで、対日輸出の概要をおさえることにしたい(国内旅費、講師謝金が必要)。こうした欧州に関する補足調査・研究を行った上で、秋以降、全体の取りまとめにに入り、年度内に成果報告書を完成させたいと考えている。 その具体的なスケジュールとしては、4月~6月にイギリス機関車メーカーに関する資料の解読と分析を行い、引き続き7月~9月にドイツ機関車メーカーに関する資料・文献収集と分析を実施する。その上で、10月~2月に全体の取りまとめを行いつつ、成果報告書を執筆し、3月までに完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に外注した英文翻訳・リライトの分量が、最初の予定より少なかったため、5000円程度の差額が生じた。 次年度に作成する報告書の英文リライトの費用に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)