2011 Fiscal Year Research-status Report
社会政策史的視点からの米国貿易政策史 -市民層の食品安全基準への不満-
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23530415
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小山 久美子 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60315215)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 米国貿易政策史 / 食品安全基準 / 社会政策史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、米国政府の食品安全政策、特に食品安全基準に焦点をあてた歴史的分析を行うことで、近年の米国貿易政策への市民の影響力増加の新現象を検討しようとするものである。近年、米国では市民が貿易自由化反対という形で貿易政策決定への影響力を強めており、その反対理由の一つに、米国政府の食品安全政策が十分でないとして、不満を高めていることが挙げられる。本研究は、これまでの米国貿易政策史研究に、食品安全政策という社会政策の新視点を導入し、貿易政策史と社会政策史の融合を試みるものである。 本研究は特に、米国政府の食品安全政策史において貿易政策と関係のある、重要な次の4点、「連邦食品・医薬品法」、「コーデックス委員会」、「HACCP」(危害分析・重要管理点監視)、「リスク評価」、の解明を主な課題としている。初年度である平成23年度は、以上の課題のうち、特に最初の2点を解明すべく、資料・文献の収集を行い、市民が近年なぜ不満を持っているのかの歴史的分析を主眼として、分析を行った。 分析により、「連邦食品・医薬品法」(1906年)に関して、米国内において当初から食品安全管理の社会政策の成立が大変であり、多大の時間を要したこと、及び「コーデックス委員会」(1958年)に関しては、当時、米国が国際機関である同委員会内でのプレゼンスを高めようと大きく成立に関与したが、米国の市民ではなく米国の多国籍企業の支持の上に生まれたものであったこと、の諸点が明らかになったことは、本研究の進展において重要な意味、意義があった。 また平成23年度は、なぜ輸入食品の安全が近年の新しい問題なのかについても分析を行い、グローバルな農産物自由化は米国の農業補助金政策(1933年)と関連があり、そのため自由化進展自体が新しい動向であることが明らかとなった。補助金政策の歴史的検討について、論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、上記の「研究実績の概要」のところで述べたように、4点の解明を主な課題としており、平成23年度は、当初の研究計画通り、2点の事柄について解明を行うことができたほか、次年度に分析を予定していた他の点についても、収集した文献、資料により分析に着手することができ、分析の点では順調に研究を進めることができた。だが、平成23年度に行う予定であった国外(米国)での資料収集、意見交換を、平成24年度に延期したことを持って、「やや遅れている」と記した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、米国(ノースカロライナ大学ほか)での資料・文献収集を行い、上記の「研究実績の概要」で記したような、本研究の分析焦点項目である「連邦食品・医薬品法」、「コーデックス委員会」、「HACCP」、「リスク評価」の4項目に関して、平成23年度の国内における資料収集、蓄積により十分に明らかにし得なかった資料、文献収集を行うことに重点をおく。 また、平成24年度(冬期)に、本研究に関する学会発表を2回行う計画にあり(現在エントリー中)、平成24年度は本研究の発信にも注力する。同時に、そこでのフィードバックを基にさらに研究を推進し、平成25年度の総括作業に繋げていく方針にある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、引き続き資料収集を行うが、特に米国での十分な資料収集に重点を置くべく、滞在期間を、当初計画していた日数より長くとり、平成23年度の旅費残分(米国訪問延期のため)を充当する計画にある。なお本報告書を記している時点(平成24年4月末)で、平成23年度の計画の物品費は、文献入手により、ほぼ使用済みとなり、平成24年度の物品費は、当初の計画通り主に、引き続いての文献費に充てる計画である。
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